静かに追い込まれるロシア

 この戦争で、静かに不利な立場に追い込まれているのがロシアである。

 ロシアはウクライナ戦争以降、イランを軍事・経済両面での準同盟国としてきた。ドローン供給、制裁回避ルート、対米牽制(けんせい)。いずれもイランへの依存度は高い。しかし現在のロシアには、イランを本格的に軍事支援する余力はない。

 かといってイランを見捨てれば、「同盟国を守れない大国」という致命的なメッセージを世界に発信することになる。

 イラン攻撃によって原油価格が上昇すれば、短期的には利益になり得るものの、中長期的には防衛力が弱体化して、制裁包囲を強化されることになる。ただでさえ脆弱(ぜいじゃく)なロシア経済をさらに締め上げる要因となるはずだ。

 今回のイラン攻撃によって、ロシアが軍事大国としての戦略的余裕を失っていることが明らかになってしまったわけだが、この点もトランプ大統領の計算だろう。

 トランプ大統領はウクライナ戦争を止めることを重要課題にしているが、うまくいっていない。

 ロシアを止めるためには、その軍事力維持を側面から支援しているインドとイランを、ロシアと切り離すことが重要になっている。インドはロシア産原油の輸入によってロシア経済を支え、イランは、制裁で滞った戦略的な物資をロシアに輸出しつづけている。

 アメリカは、インドについてはすでに一定の圧力をかけるのに成功している。さらにイランを抑え込むことができれば、ロシアは大打撃を受け、ウクライナ戦争を停戦に追い込む可能性が増す。

中国への影響はあるか

 一方、今回のイラン攻撃については、中国がかなり抑制的で、アメリカに対する正面からの批判を避けている。だが、中国もまた打撃を受けた国だと考えるべきだろう。

 中国は産油国であるイランとベネズエラに莫大な投資をして、原油権益を武器化してみずからの覇権を拡大し、ドルに対抗できる「ブリックス通貨圏」を作る野望を進めてきた。