だが、その野望は、1月3日のベネズエラ攻撃と、今回のイラン攻撃で実質的に断たれることになった。
また、イラン体制が不安定化すれば、中国もまた原油の安定供給と中東での影響力の双方を失うリスクに直面する。さらに、中国はイランを軍事的に守る立場にはないため、ベネズエラのときと同様に、せっかく作り上げた権益が失われるのを見守るしかない。
中国外交の基本は「内政不干渉」と「安定」であり、体制転換戦争は最も望まない事態である。
今回の件で、中国が掲げてきた「秩序ある多極化」が、実は砂上の楼閣に過ぎなかったことが露呈したのである。
最悪は「地域戦争」、最良で「普通の国」
最後に、このイラン攻撃がもたらす今後のシナリオを「最悪」と「最良」で整理してみたい。
最悪のシナリオは、イランが湾岸諸国の石油施設などを攻撃し、地域戦争へと拡大するケースだろう。それに対して、最良のシナリオは、革命的な民主化ではなく、イランが「普通の国」へと回帰することである。
イランは人的資本、資源、歴史のいずれを取っても、本来はG20級の潜在力を持つ大国である。日本とイランが長年にわたって比較的良好な関係を維持してきた背景には、どちらも古い歴史を持つ伝統国家であるという共通点がある。
しかし、現在のイランは、革命イデオロギーを最優先するテロ輸出国家に変質している。その装置として機能してきた革命防衛隊が弱体化すれば、イデオロギーより国益を優先し、人々が恐怖なく暮らせる「普通の国家」へと向かう可能性は残されている。
現在のイランは、「トンネルの先に光は見えているが、そのトンネル自体が崩れずに抜けられるかどうかは、まだ分からない」という段階にあるのではないだろうか。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







