「社内でバッグを販売しているそうですね」と言われたBは……

 3日後、D部長はBを応接室に呼んだ。

「Bさんは社内で、女性社員たちにバッグ類を販売しているそうですね」

「私はただ、自分が良いと思ったものをみんなにも勧めただけです。それのどこが悪いのですか?」

「あなたの価値観や好きな商品を否定するつもりはありません。しかし、一部の女性社員たちから私の元に、『Bさんに無理やり買わされた』『断ったら無視された』との苦情がありました。これは本当ですか?」

「無理やりだなんてとんでもない!みんな納得して買ったんですよ」

 憤慨するBに、D部長は落ち着くよう諭した。

「あなたが良かれと思って勧めたことでも、相手が断りづらい状況だったら『無理やり買わされた』と思われるでしょう。実際、こうして非難の声が複数出ているわけだし……どうですか?」

 Bは下を向いたまましばらく黙っていたが、D部長が改めてBに事実確認をすると今度は素直に認めた。D部長はBに就業規則の該当箇所を見せながら、厳しい口調で言った。

「就業規則では、社員が職場で自らが扱う商品やサービス類の販売や勧誘行為をすることが禁止されています。今後は商品の紹介や販売、会員への勧誘などは控えてください。もし、注意を守らない場合は就業規則により懲戒処分の対象にします」

「懲戒処分ですか……わかりました。もうしません。商品を買ったり、無視したりした人たちには、きちんと謝ります」

 Bは小さく息をつき、静かにそう答えた。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。

木村政美 プロフィール
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