いま重視されているのは、上からの「細かい指示」ではなく「意図の共有」。現場が自ら判断し、行動を選び取る――。その自己主導型の文化を米陸軍は「ミッション・コマンド」と呼び、全階級に徹底しています。

命令の意図まで理解していると
不測の事態にも戸惑わない

 では、「従来型」と「自己主導型」による指示の質の違いを、具体的な例をもとに見ていきます。

 もし、橋を確保しなければならないとしたら?

従来型の指示
上司「明日の朝10時までに、『A橋』を確保せよ」
部下「なぜ、その橋なんですか?」
上官「理由はいい。とにかくやれ」

「何を、いつまでに」だけが指定され、なぜそれを行うのか(意図)がありません。こう命じられた部下は思考を止め、状況が変化すれば立ち往生するしかありません。

自己主導型の指示
上司「明日10時までに、『A橋』を確保せよ。理由は、我が部隊の機甲戦力(戦車や装甲車部隊)をB町へ通すためだ。そこを押さえれば、敵の補給路を断てる」
部下「了解しました」

 意図を理解した部下は、予想外の事態が起きても柔軟に判断し、行動できます。

 もし、敵の砲撃で橋が吹き飛んだら?

従来型の報告
部下「A橋が破壊されていました」

 上司の次の指示を待つしかありません。

自己主導型の報告
部下「A橋は破壊されていましたが、北側にあるB橋が使えます。現地の確認も済んでおり、車両の通行も可能です」

 目的を理解しているため、自分で判断して任務を継続できます。上司がそばにいなくても、任務を進める。そんな主導性を持つ人材こそ、組織にとって最大の戦力になるのです。

自ら動く部下を育てる
4つの要点

 これは戦場だけの話ではありません。現代のビジネスでも、職場は常に「前線」です。

・昨日決まった方針が、翌朝には陳腐化している
・指示を待っていたら、競合に先を越された
・上司が不在のときに、大きな判断が求められた

 情報が一晩で陳腐化する時代、指示を待つ人から置き去りになります。だからこそ、「意図を読み、自ら選ぶ力」が組織の生存力を決めるのです。