メーカーの採用力 待遇・人事の真実Photo:kyodonews

DX領域へ、ビジネスをシフトしているNEC。それを可能にしているのが、AIやサイバーセキュリティなどデジタル分野の知識を身に付けた社内のDX人材だ。独自の育成プログラムによって、DX人材の内製化を進めてきた。社内教育で得た知見を社外にも提供しており、このプログラムはビジネスとしても成長しつつある。連載『メーカーの採用力 待遇・人事の真実』の本稿では、NECの「DX人材爆増計画」の全貌を明かすとともに、育成プログラムの事業化の秘訣を解明する。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

DX人材の内製化でデジタル事業を伸ばしたNEC
原動力となった「教育プログラム」を500社超に提供

 NECは、昨年DXブランド「BluStellar(ブルーステラ)」を発表するなど、DX領域へのシフトを鮮明にしている。2023年度に売上収益が3758億円だったブルーステラ事業は、24年度には5424億円にまで成長した。25年度は目標の6240億円に向けて順調に推移しているという。

 NECの変革を支えているのが、AI(人工知能)やサイバーセキュリティといったデジタル分野の知識を身に付けたDX人材だ。2023年度に約1万人だったDX人材を25年度には1万2000人に増やす計画だ(NECの社員の待遇を含めた人事施策については、本連載の『絶好調のNEC「DX人材爆増」を支える人事施策の“4本柱”を徹底解説!社員への株式報酬付与の効果は?』参照)。

 あらゆる業界でデジタル人材が不足する中にあっても、NECは外部の即戦力採用に依存していない。社内の「DX人材育成プログラム」が機能しているためだ。当初「NECアカデミー for AI」として19年にスタートしたこのプログラムは、現在はブルーステラを冠した「BluStellar Academy for DX」として進化を続けている。

 この「アカデミー」が社内で成果を上げているため、NECは社外に研修サービスとして提供している。大和証券やダイキン工業、大和ハウス工業など、同サービスを採用している企業は500社を超える。社内の人材育成システムがNEC自身のDX事業を伸ばすだけでなく、社外向けサービスとして収益も上げており、“一石二鳥”が実現しているというわけだ。

 1万人規模のDX人材を育て上げ、さらに社外展開で収益貢献が可能になったNECの人材育成の仕組みは、どのようなものなのだろうか。

 次ページでは、NECの成長を支えるDX人材育成プログラムの全貌を明かすとともに、ビジネス化の秘訣を明らかにする。