「上司の指示の出し方が悪い」
「部下のミスが原因だ」
「取引先の対応が悪いせいだ」

 つまり、矢印がすべて他人に向いているのです。

 たしかに、相手の落ち度だったケースもあるかもしれません。けれども、「自分にできることは1%もなかったか?」と問い直す人こそ、トラブルから学びを得られます。

 あなたは、矢印を外に向けたまま終わっていませんか?それとも、自分に向け直して「主動性のスイッチ」を入れていますか?

 自衛隊のある夜間訓練でのこと。私は中隊長として、部下の動きを観察していました。

 問題になったのは、ある隊員が指揮所のドアを開けるたびに、室内の光が外に漏れてしまうことでした。夜間の「遮光」は、敵に位置を悟られないための鉄則。それなのに、何度注意しても改善されない。

 疲労も相まって、例の隊員への不満が周囲に広がっていきました。しかし、彼を叱っても根本的な問題は解決しません。そこで私は、叱責ではなく「仕組み」に目を向けました。

 ドアの真正面に「遮光に注意」と紙を貼るように指示したのです。

 すると、それだけで劇的に改善。開閉のたびに自然と紙に目がいき、誰もが注意深く行動するようになったのです。

 人の記憶よりも、「動線に沿って意識を促す仕組み」のほうがよほど効果的でした。

責任を個人に押しつけず
チームでフォローする体制を

 トラブルは、たいてい複数の要因が重なり合って起こります。誰かを責めても、それで再発が防げるわけではありません。

 たとえば、こんなケースを考えてみてください。

 Aさんは真面目で信頼されるビジネスパーソン。ところがある日、大事な会議の資料を準備し忘れ、同僚のBさんが急いで対応するも間に合わず、決裁が見送られました。表面的にはAさんのミスです。

 けれども、こんな背景があったとしたらどうでしょうか?

・Aさんの奥さんが臨月で、出産が間近
・Aさんのご両親の体調が悪く、毎晩病院との往復が続いていた
・昨夜は海外出張からの帰りが深夜になった

 こうした「見えない事情」が重なるなかでも、チーム内に「誰かが急な穴をカバーできる仕組み」があれば、ミスは防げたかもしれません。