カリフォルニア大学バークレー校のブルールマン=セネカルとアイドゥクによる研究では、ネガティブな出来事をふりかえるときの感情的な反応が「時間的な視点の持ち方」によってどう変わるのかを調査しました。

 この実験では、ストレス下にある参加者に「1週間後」あるいは「10年後」の視点から現在の自分に起こった出来事を捉え直してもらいました。結果、「遠い未来の視点」が感情を和らげるということがわかったのです。

 日常のちょっとしたイライラ・モヤモヤを10年後も覚えていて、そのことでイライラしているということはまずないでしょう。なんなら1年後でもすでに、いちいち覚えていて気にしているということはないでしょう。

 そう考えると、そんなちっぽけなことに心のエネルギーと時間を浪費していないで、せっかくの「今」を楽しむほうが絶対に建設的です。

 こうした現状の自分から距離を取る方法は、心理学では、「セルフ・ディスタンシング」と呼びます。今この瞬間の感情や出来事にのめり込みすぎないようにするための認知的戦略です。

「これは感情的になっているだけかも」「時間が経てば違う見方ができるかも」。そんなふうに、ことばによって自分の状態を言語化する力があるだけで、次の行動が大きく変わっていきます。

 つまり、「10年後覚えてないよ」は、感情との適切な距離感を保ち、思考と行動を“自分で選べる状態”に戻してくれることばなのです。

 どうしても心がざわつくとき、不安で前に進めないとき、頭の中がモヤモヤしてまとまらないとき。ぜひこのシンプルなフレーズを、心の中で唱えてみてください。

 きっとあなたの中の“観察者”が目を覚まし、冷静さを取り戻す手助けをしてくれるはずです。

言語化のよい習慣
心がざわめいたら、「遠い未来の視点」をことばにする。

ネガティブな感情と
適切に距離をとる方法

 前節で扱ったセルフ・ディスタンシングは、時間という次元での現状の自分との距離の取り方でした。

 実は、時間以外の「ディスタンシング(距離の取り方)」もいろいろと提案されています。