「少年院に来た感想は?」→「楽しそうです」逮捕された中学生の言動に大人があきれるワケ【マンガ】『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社

児童精神科医による大ヒット書籍のコミカライズ版として、くらげバンチ(新潮社)で連載されている(原作/宮口幸治、漫画/鈴木マサカズ)。今回は、第9話「出水亮一と黄色いファイル」から、原作の立命館大学教授で児童精神科医の宮口幸治氏が漫画に描けなかったエピソードを紹介する。

いじめによって蓄積された強いストレスの行き先

 少年院に入院している男子少年全体の非行名を多い順に見ると、「窃盗」「傷害・暴行」「詐欺」「強盗」と続き、その次に位置するのが「不同意性交・不同意わいせつ」です(令和7年版 犯罪白書)。

 年齢別に見ると、「不同意性交・不同意わいせつ」の割合は、18歳以上で4.3%、16・17歳で7.6%ですが、16歳未満になると12.5%にまで上昇し、「窃盗」「傷害・暴行」に次いで3番目に多い非行となります。つまり、年齢が低いほど、性非行で少年院に入院する少年の割合が高くなるという傾向が見られます。

 私が勤務していた少年院は、発達障害や知的障害のある少年たちが収容される施設でした。そこで特に特徴的だったのが、性非行の割合が非常に高かったことです。

 私は整理のために、少年たちのファイルを非行内容ごとに色分けしていました。窃盗系を青、暴力系を赤、性非行系を黄色と決めていましたが、時期によっては黄色のファイルが最も多いこともありました。そして、その黄色ファイルの少年たちの被害者は、彼らよりもはるかに年下の幼児や小学校低学年の子どもであるケースが目立っていました。

 マンガの中でも典型的なケースとして描いていますが、出水亮一(仮名)少年には強い悲壮感がなく、むしろ少年院生活を「楽しそう」と語ります。これは当初、私にとって大きな驚きでした。

 中学生という年齢で非行によって逮捕され、自由を奪われ、矯正施設に入れられたのです。私は、少年院にいる少年たちは皆、悲しみに沈み、自分の行為を深く悔い、被害者への謝罪の気持ちでいっぱいなのだろうと想像していました。

 しかし、実際にはそのような少年はごく少数でした。多くの少年はどこか他人事のように振る舞い、教官たちをあきれさせる――まさに、ここに登場する亮一のような姿だったのです。

 性非行の要因については、生物学的要因、環境的要因、心理学的要因など、さまざまな研究が示されています。しかし、私が彼らと面接を重ねる中で感じた共通点は、「性欲が強い」ということではありませんでした。実は多くの少年が凄惨ないじめ被害を経験していたのです。

 いじめによって蓄積された強いストレスのはけ口として、自分よりも弱い存在である幼児や小学校低学年の子どもが標的になっていたのでした。まさに、「被害者が新たな被害者を生む」構図です。

 さらに、こうした少年たちへの矯正教育を難しくしていたのが、知的なハンディや認知機能の弱さでした。指導内容を理解することが難しい、被害者の感情を想像することができない、反省の段階にまで到達できない――そもそも、なぜ自分が少年院に入っているのかを理解できていない少年も少なくありませんでした。マンガに登場する亮一も、まさにその1人なのです。

 原作者である宮口幸治は、児童精神科医として、実際に医療少年院の勤務歴があります。その経験から書いた『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)をマンガ化した作品。マンガの続きは「ケーキの切れない非行少年たち」でチェック!

『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社
『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社『ケーキの切れない非行少年たち』(c)宮口幸治 鈴木マサカズ/新潮社