1人で15棟超!?手が回らない
現場監督のリアル

 施主がどれほど情熱をもって向き合っても、実務を担う現場側が余裕を失っていれば、その思いは形になりにくい。現在、日本の住宅現場は作り手側の努力だけではカバーしきれないほど、物理的に手が回らない状況に陥っている。

 背景にあるのは、慢性的な人手不足と職人の高齢化だ。特に現場の司令塔である「現場監督」の負荷はパンク寸前といえる。有効求人倍率は極めて高く、1人の監督が10件、15件、ときにはそれ以上の現場を同時に抱えるケースすら珍しくない。

 さらに近年、省エネ基準の適合義務化や4号特例の縮小(構造審査の厳格化)といった制度のアップデートが続いている。建物の性能や安全性を担保する意味で、消費者にとっては喜ばしい進化ではあるものの、現場にとっては確認事項の増加や事務負担の増大に直結している。

 現場監督は数十人の職人をまとめ上げるプロジェクトマネージャーだが、土地も設計も異なる現場をこれほど抱えながら隅々まで細かな確認を行うのは至難の業だ。現場の管理機能だけに頼り切れない現状がある以上、プロジェクトの責任者の一人でもある施主もまた、品質を担保するための確実な手段を講じておく必要がある。

不具合指摘率は82%!
最新データが示す現場の実態

 現場の逼迫は数字にも表れている。ここで、さくら事務所が2025年に実施した1370件の『新築一戸建てホームインスペクション』の結果を見ていこう。引き渡し前の物件をプロが客観的に調査し、その施工品質の傾向を明らかにしたものだ。

 データを見ていくと、建物の基礎や壁、窓といった住まいの根幹をなす部分、つまり暮らしの基本となる重要な箇所で、何らかの不備が見つかる割合は82.0%に達している。2024年の76.4%と比較しても5.6ポイント上昇しており、10軒あれば8軒以上の家で、引き渡し前に何らかの直しが発生しているのが実状だ。指摘割合の多い3つの箇所を挙げてみよう。

(1)窓やドアなどの開口部(47.7%)
 建具の立て付け不良やビスの打ち忘れ、鍵(サブロック)の干渉など、本来なら見逃すべきではない基本動作の抜け漏れが目立つ。

(2)基礎、床下面(35.5%)
 将来の耐久性に影響するひび割れや、ジャンカ(コンクリートが上手く流れ込まず、すき間や空洞ができた状態。隙間から雨水が浸入して中の鉄筋を錆びさせ、建物の寿命を縮めるリスクがある)、配管が貫通する部分のすき間埋め不足などが見られる。

(3)外壁の仕上げ(31.9%)
 表面の欠けやひび、雨漏りリスクを招くシーリングのピンホール(小さな穴)などが放置されている。

 1軒あたりの平均指摘数も15.5カ所と、前年より増加傾向にある。詳しくデータを読み解くと、すべての現場が一律に悪化しているというより、現場ごとの品質のバラつきが顕著になっている。人手不足や事務作業に追われる中、現場の気配りが隅々まで届きにくくなり、表面上はわかりにくい「見えない部分」の不備が一部の現場で顕在化しているといえるだろう。