多くの親が悩みがちな
「習い事の辞め時」については?

 それは、「そもそも何を習得するためにその習い事をさせるのか」「その目的に沿ったゴールを達成したタイミングでやめる」ということです。

 もし、子ども自身がその習い事に対して情熱を持って取り組んでいる、または心から楽しんでいるなら継続させてあげるべきだと思います。情熱を持って取り組めるものが見つかったこと自体が、幸運だからです。この場合、親が干渉しなくても本人が上達したいと積極的に考え、創意工夫することで多くの成功体験を積んでいくはずです。

 しかしそうでない場合、なんとなく始めて、なんとなく続けていると、「これまで投資してきた時間とお金がもったいない」「辞めると忍耐力がない子になる気がする」といった漠然とした不安から、ズルズルと続けてしまいがちです。

 これは経済学および行動経済学の「サンクコストバイアス」に当たります。すでに投じたおカネ、時間、労力を惜しむあまり、損失がでると分かっていても、その投資を継続してしまう心理傾向のことです。

 子どもの時間と体力は有限です。だからこそ、最初から「完了条件」を設定しておくことをおススメします。

 例えば、「水難事故から身を守るための泳力をつけること」を目的にスイミングに通うなら、「クロール、平泳ぎでそれぞれ200メートル泳げるようになる」「1級に合格する」などをゴールに設定し、達成したら盛大にお祝いをして卒業する。空いた時間を、子どもが新たに興味を示しているもの、できれば語学やプログラミングなどの、また別の能力を高めるための活動に再投資するというイメージです。

 このように、習い事を「固定された義務」ではなく、子どもの成長段階に合わせて必要なスキルを獲得するための「プロジェクト」としてとらえる視点が必要です。「辞める」のではなく「卒業する」ととらえましょう。そうすれば、子どもは「やり切った」という達成感を持って、次のステージへと進むことができます。

 スポーツや武道に真剣に取り組むことは、将来どの分野に進もうとも通用する「折れない心」「仲間と協働する力」「自らを律する力」という、一生モノの財産を築くことにつながります。親がその本質を理解し、賢く、温かく見守ることで、習い事はその真価を発揮するのです。