それでも平屋に住みたい!
多様な平屋と日本家屋の価値

 実情を知るほどなかなか手が出しにくい平屋だが、「住む方法もある」と竹之内氏は話す。

「最近は3Dプリンターで作れる平屋物件も話題です。また、比較的安く購入できる規格化された一人住まい用の平屋物件なども登場しているので、平屋に住むこと自体は実現可能でしょう」

セレンディクスが発売する3Dプリンター住宅[同社提供]セレンディクスが発売する3Dプリンター住宅[同社提供] Photo:JIJI

 田舎の広大な土地にこだわりの平屋を建てることもできるだろうが、周りが田んぼではせっかくのおしゃれな平屋も生きない。また、ファミリー向けの2階建て物件が点々と建つ立地であれば、街並みから浮いてしまう心配もある。

「ドラマの設定として描かれている平屋は都内だと思いますが、本当に快適な平屋ライフを過ごすなら周りの物件を全部買うくらいでなければ、平屋特有の楽しみ方はできない可能性が高いです」

 一方、中古の平屋物件については、地域によっては買い手が付かず利益が見込めないため、取り壊されることも少なくない。

「新築信仰は若い世代を中心に薄れつつあるとはいえ、依然として根強いものがあります。不便な立地であっても“新築”というだけで買い手がつくケースは少なくありません。価格面で手が届きやすい2階建てや3階建ての狭小住宅が、結果的に選ばれやすいのが現実です。どれほど魅力的な平屋であっても、重要文化財級の価値が認められない限り、事業として採算が合わないと判断されれば解体されてしまう。新築を優先する市場の価値観が変わらない限り、この流れは簡単には止まらないでしょう」

 不動産市場では、日本家屋としての歴史的・文化的価値よりも、「商品として成立するか」「買い手が自由に再建築・活用できるか」といった流動性の高さが重視される傾向が強い。憧れとしての平屋と、資産としての住宅。そのあいだには小さくない隔たりがある。レトロでぬくもりある暮らしへの憧れが広がる一方で、実際の選択は立地や資産価値を優先せざるを得ない――。平屋ブームの裏側には、日本の不動産市場が抱える構造的な事情が横たわっている。