このズレを防ぐのが、企業理念です。

 理念とは単なるスローガンではありません。

 組織が何を価値とし、どの方向に進み、どのような行動を評価するのかを定める、重要な判断基準です。

 理念を理解していない状態では、自分の行動が組織にとって価値あるものなのかを判断することはできません。

 一方、きちんと頑張りが評価される人は、常に「この行動は、会社の理念や経営方針に沿っているか」という基準で自らを判断しています。

 つまり、理念や経営方針と照らし合わせた上で、自分は組織において何の役割を果たすべきなのか、きちんと見定めているのです。

 だからこそ、評価とのズレが生まれません。

 理念という共通の判断基準があることで、個人の努力は組織の前進へと正しく結びつきます。

デキる上司の「結果を出す技術」筆者作成
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「自分にぴったり合う仕事があるはずだ」
という大きな誤解

 ここで、極めて重要な問題があります。

 日本企業の多くは、自社の理念が現場でどれだけ理解され、実際の判断基準として使われているかをほとんど把握していないという事実です。

 従業員満足度調査やモチベーションサーベイは実施していても、

・社員が理念に共感しているか

・理念を基準として行動しているか

 といった、組織の方向性そのものに関わる指標を定量的に把握している企業は極めて少ないのが現実です。

 その結果、何が起きるのか。

 社員は「自分は会社から満足な待遇を受けているか」「自分はモチベーションを会社から上げてもらえているか」という誤ったスタンスで組織と向き合うようになり、本来あるべき「組織にどう貢献するか」という視点を失っていきます。

 しかし、本来、仕事とは「楽しませてもらうもの」ではありません。

 多くの人は、「自分にぴったり合った仕事がどこかにあるはずだ」と考えがちですが、現実には、最初から自分に完全に適した仕事が用意されていることはほとんどありません。

 仕事の面白さとは、自ら行動し、意味を見出し、工夫を重ねることで発見していくものです。

 欧米諸国をはじめとした世界のトップ企業の人材教育では、この前提が明確に教えられています。