ただしキャッシュフロー面では事情が異なる。実際の費用の支払いはメンテナンスのたびに発生する。そして、保存費は開業から時間が経過し、設備が損耗するにつれ増額するため、貸付料との合計額は開業から時間が経過するごとに増加していく。
キャッシュインも安定的である保証はない。これまでの実績では旅客需要が想定を上回っているが、地震や水害、あるいは、コロナ禍のような不測の事態が起これば、受益が大幅に減少する可能性はある。そのためJR各社は、一定期間を切り取って「利益が上振れしている」という議論は意味がないと主張する。
「物価スライド」を適用した
長期間定額という解決策
そもそも30年間という超長期契約は成り立つのか。貸付料における収入と費用には物価上昇率が織り込まれているが、仕組みが構築された1997年から2020年ごろまで、消費税の影響を除けば物価はほとんど変動しなかった。
しかし、近年はインフレで人件費や物価が上昇するという、過去30年間に見られなかった状況となっている。一方、物価上昇の収入への反映は運賃値上げとして行われるが、現行制度では鉄道事業が赤字にならなければ運賃改定は認可されない。
JR各社は、貸付料は長期間定額であることが望ましいと主張する。JR西日本は「鉄道の設備投資は20~30年単位で進める。それを前提に投資計画を立てて、企業努力でお客様に還元していく。3~5年でコロコロと数字が変わると腹をくくって経営ができない」として、安定経営と経営インセンティブが重要だと説明する。
インフレ対策として物価上昇率の想定を引き上げる選択肢もあるが、今後の経済状況は不透明だ。極端な話、物価が倍になれば貸付料の価値は半減する。そうなると後述するように、貸付料は新規区間の建設財源として機能しなくなる。
ひとつの解決策は、物価指数の変動に合わせて1年ごとに調整する「物価スライド」だ。JR西日本は運賃制度について「総括原価方式において、今後の物価上昇を踏まえると、都度の認可ではなく、物価スライドに対応するような柔軟な制度が望ましい」とヒアリングで述べている。
続けて「貸付料は一定の物価上昇を加味しているが、運賃は会社の収支全体を見て決めるため実際は改定できていない」としており、収入と貸付料の双方に物価スライドが適用されるのであれば、全く反対というわけではないようだ。







