「シリコンバレーの天才たちの群像劇に、ページをめくる手がとまらない」
「この本を読まずして、現代の国際情勢は語れない」
発売以来、そんな絶賛の声が続々集まっているのが、書籍『半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』(クリス・ミラー著、ダイヤモンド社刊)だ。
本書は、スマートフォンなどの日用品から軍事兵器に至るまで、世界の命運を握る「半導体」をめぐる米中などの熾烈な覇権争いを圧倒的なスケールで描き出し、日本のビジネス現場でもさまざまな企業・業界・個人から圧倒的な支持を集めている。
今回、著者のクリス・ミラー氏が緊急来日。ラピダスの成功確率から、AI時代の日本の半導体メーカーの生き残り戦略まで、我々が今もっとも知りたい質問をぶつけてみた。全8回にわたってお届けする。(構成/大野和基)
Photo: Adobe Stock
国家が主導する戦略には「リスク」を伴う
――現在、日本政府は巨額の補助金を投じてTSMCを熊本に誘致し、最先端半導体の国産化を目指すRapidusを設立しました。過去の日本の産業政策の歴史を踏まえ、今回の国家主導の復活戦略の成功確率をどう評価しますか?
クリス・ミラー(以下、ミラー) まず、国家主導の戦略を追求しているのは日本だけではありません。米国、欧州、中国など、世界の主要経済国はすべて同様の戦略をとっています。
中国の補助金規模を考慮すると、公平な競争条件を整えるためには、ある程度の政府の関与が必要だと考えます。
しかし、国家主導の戦略にはリスクも伴います。歴史的に見ると、成功する戦略は、当初は政府が何らかの役割を担うことが多いものの、その後すぐに民間部門の需要が企業活動やイノベーションを推進する方向へと移行していく傾向があります。
ですから、日本の産業政策における次のステップは、政府がこうした種類のプロジェクトに対する支援を民間セクターに確実に引き継げるようにすることだと考えます。そして、その引き継ぎが確実に実現するためには、今後数年間が非常に重要になるでしょう。
ラピダスは今、「チャンス」と「リスク」に直面している
――では、その成功確率について、おおよその見当をつけていただけますか?50%くらいでしょうか、それとも2%くらいでしょうか?
ミラー そうですね、私の見解はこうです。TSMCを見れば、工場を建設し、収益を上げて運営する方法を知っていることは間違いありません。
ですから、TSMCに対する日本政府の支援についてはあまり心配していません。工場は稼働し、収益を上げて運営されるでしょうから。
日本がより大きな賭けをしているのは、間違いなくラピダスだと思います。そして、そこには大きなチャンスとリスクが一つずつあると考えています。
チャンスは、ラピダスが生産を計画しているようなハイエンドのチップは、現在世界中で完売状態にあるということです。
TSMCには生産能力が足りません。サムスンにも足りません。アメリカのインテルは製造体制の立て直しに取り組んでいます。
ですから、今ほどハイエンドチップ市場に参入するのに適した時期はありません。供給が限られている一方で、AIに牽引された需要が非常に高いからです。これが朗報です。
課題は、ラピダスがTSMCと競争しなければならないことです。
TSMCは並外れた競争相手です。もちろん、彼らは非常に優れた実績を持っており、世界最大のテクノロジー企業が最も重要なチップの製造を主にTSMCに委託しているのには理由があります。
ですから、AIチップの需要という点では、ラピダスにとって市場環境はこれ以上ないほど良好と言えるでしょう。しかし、競争環境は厳しいものでもあります。そして、それがラピダスが直面している課題だと私は考えています。







