【さらに詳しく!追加解説】
ホルムズ海峡の封鎖の影響は

「ホルムズ海峡から一滴の石油も運べないようにする」とイラン革命防衛隊が警告したのが3月2日。ホルムズ海峡は今、どうなっているかというと、ひとことで解説するのはなかなか難しい。

 ホルムズ海峡封鎖の影響が具体的に表れるには数週間かかる。各国の統計(週報)で、在庫の取り崩しが始まると需給がひっ迫しつつあることを表すようになる。この時点から封鎖の影響が目に見えるようになる。しかし見えた時には、すでに原油価格は変動している。

 わが国では、石油連盟の原油・石油製品供給統計(週報)で、原油から石油製品までの在庫量を確認できる。洋上の原油タンカー数は事態を正確に把握するのに欠かせないが、この原油統計には洋上の在庫が含まれず、何隻のタンカーが日本に向かっているかは把握できない。

 一方、有事への備えになるのが民間備蓄と国家備蓄だ。民間備蓄は在庫を積み増したもの(備蓄義務量)、国家備蓄は危機対応の備蓄を指す。供給を維持し、価格高騰時に備蓄から追加供給することで需給バランスを改善して混乱を防ぐのが目的だ。

 わが国で行われた備蓄放出はこれまで7回ある。1979年の第二次石油危機、91年の湾岸戦争、2005年のハリケーン・カトリーナ、11年の東日本大震災とリビア情勢、21年の価格高騰対策の協調放出、22年のウクライナ侵攻だ。なお、国家備蓄が放出されたのは21年の協調放出のみ。

 価格高騰対策としての備蓄の放出は、需給のバランスというよりも、先物市場のプレイヤーとの心理戦でもある。21年の協調放出では、実際にはまだ放出していないにも関わらず原油価格が急速に下がり、備蓄放出が正式に発表されると、逆に原油価格は上昇した。つまり、市場を動かす材料と化したこともあるのだ。

 そもそも海峡の封鎖とは、武力などにより通行が困難となる物理的な封鎖と、船舶へのリスクを含めた経済的・心理的封鎖があり、後者には保険・傭船料の高騰の影響などが含まれる。物理的に封鎖すればその回復には多くの時間を要する。まして機雷などが敷設されれば回復までの時間は見通せない。

 しかし、これまでホルムズ海峡は一度も長期的に封鎖されたことはなかった。1984年から4年間続いたイラン・イラク戦争でも、400隻以上の船が被害を受け保険料が高騰したが、完全封鎖とはならなかった。

 仮にホルムズ海峡封鎖でも、1~2カ月間は備蓄により数量的には不安なく供給されるが、その先の見通し次第では、これとは関係なく目に見えて上がっていくだろう。見通しとは、戦禍がいつ、どのようになったら終わるのかという終着点の明確さを指す。

 わが国で最も多く備蓄が放出されたのは東日本大震災の25日分だった。もし今後、1カ月を超える供給危機が起きれば、原油調達競争が激化し、さらに価格高騰プレッシャーとなる。

 万が一3カ月を超えるような事態になれば、生産調整にとどまらず、需要を適切に制限することが始まり、私たちの生活の広範囲に影響を及ぼす。1974年の第一次石油危機後の「狂乱物価」が日本の高度経済成長を終わらせたような、悪夢のシナリオである。

 こうなると日本経済は再び、エネルギー供給構造の抜本的な変革を迫られることになるだろう。