第2に、異次元の少子化対策のほとんどが給付拡大策になっていますが、給付拡大が夫婦の出生数に与える効果はわずかであることが知られています。子どもの養育費は1人当たり1300万円から3000万円程度、そして女性のキャリア中断で失われる逸失所得は1億から2億円程度にも上ります。この莫大な費用に比べれば、少子化対策で給付される金額はほんのわずかに過ぎません。

 また、給付が増えた場合、子育て世帯は子どもの数を増やすよりも、既にいる子どもに対する塾代、お稽古事の月謝、進学費用など、教育費を増やそうとします。これは、子どもの量と質の間にトレードオフがあるからで、子どもの数を増やせば1人当たりにかけられる教育費が減ってしまいます。したがって、多少、給付金が増えたところで、子どもの数を増やそうと決断する夫婦はあまり多くはありません。

 第3に、対策があまりに総花的です。すなわち、様々な施策に資金が広くばらまかれ、1つずつの施策が小粒すぎます。全て合計すればそれなりの金額になるのでしょうが、情報が拡散されすぎてインパクトがありません。インパクトがなければ、結婚や出産という大きな決断に際して、影響を与えることは難しいと考えられます。

医療保険を財源にするなら
目的外流用の批判は必至

 第4に、そもそも少子化対策としての効果が疑われる施策が含まれています。例えば、待機児童が大幅に減少している現在、保育の拡充は少子化対策としての効果があまり期待できません。むしろ、こども誰でも通園制度に定員を振り分けたり、配置基準を厳しくすれば、保育所の定員が減少しますから、少子化対策としては逆効果です。大学院の授業料の後払い制度も、少子化対策になるのかどうか不明です。

 第5に、この対策にかかる費用負担は、子育て世帯からも徴収されますので、ますます効果が薄まります。すなわち、異次元の少子化対策の費用は毎年3.6兆円と見込まれていますが、そのうちの1兆円程度は子ども・子育て支援金として、医療保険の保険料に上乗せして国民から徴収されることになっています。