「経営者報酬が昇進トーナメントのご褒美になっているな」程度の(取り決めがあるわけではなく)保証のない認識だったと思います。契約書に「社内での昇進トーナメントに勝ち残ったら代表取締役に就任し、経営者報酬○○円を保証する」と書かれていた人はいないでしょう。

 つまり、雇用期間内の詳細な契約が明確ではなく、業績評価方法もあいまいなケースが多くあります。

 このような日本でよく利用されてきた業績評価方法が、主観的な評価、すなわち主観的業績評価です。とくに事前の取り決めをせずに、発生した状況やこれまでの働きぶりが総合的に評価されるというのが、日本式の主観的業績評価では主流だったと思われます。

 また、事前に決めた内容をちゃぶ台返しされるケースもあったりしたのではないでしょうか。

上司の評価ひとつが
給料や昇進を左右する

 やはり日本は他国に比べると、主観的業績評価の利用頻度は高いと考えられます。早稲田大学の伊藤秀史も、日本企業のインセンティブ・システムの特殊性として主観的業績評価の利用をあげています(Itoh 1991)。

 これにはいくつか理由があると考えられます。たとえば、日本企業で有名な品質管理方法にTQM(Total Quality Management)という方法があります。聞いたことはありませんか?日本語でいうと全社的品質管理です。

 その名のとおり、品質管理部だけでなく企業全体として品質を管理することをさします。当たり前の話ですが、品質を業績指標とするなら非財務指標を利用することになります。しかも、裁判所での立証が難しかったり、契約で事前に盛り込めない変数だったりします。そうすると、主観的業績評価を利用せざるを得ません。

 しかも、日本企業では客観的な評価と主観的な評価をミックスして利用されるケースもあります。

 神戸大学の梶原武久は、人の働きぶりに対してはある程度客観的な評価がされるものの、人の能力に対しては主観的な評価方法が利用されてきた傾向にあるとしています(梶原2005)。