慕われる上司はムリしない…部下の心をひらく「いつもの2割増し」の法則
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンク「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵 著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は、生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。同書をベースに、表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウを紹介しよう。

「そりゃ心も離れるわけだ…」1on1で部下がスッとシャッターを下ろす上司の“痛い話し方”Photo: Adobe Stock

どうも部下の反応が薄い……

部下との1on1ミーティングや日常の業務連絡において、「どうも部下の反応が薄い」「本音を引き出せていない気がする」と悩むことはありませんか?

多様なメンバーを抱えるマネジャーにとって、一人ひとりと深い信頼関係を築くことは重要なミッションです。そのための有効なアプローチとして、言葉の内容だけでなく、相手の「ペース」や「トーン」に自分を合わせるというテクニックがあります。

ペースの不一致が「心のシャッター」を下ろす

部下の中には、物事をじっくりと考え、ゆったりとしたペースで話すタイプの人もいれば、頭の回転が早くテンポよく話す人もいます。たとえば、ゆったりと話すタイプの部下に対して、上司であるこちらが早口で一方的にまくしたててしまったらどうなるでしょうか?

「結論は?」「それで、どうするの?」と矢継ぎ早に言葉を浴びせられると、相手は急かされているように感じて萎縮してしまいます。結果として、部下は「自分の話をちゃんと聞いてもらえていない」「理解しようとしてくれていない」と感じ、防衛本能から無意識のうちに「心のシャッター」を下ろしてしまうかもしれません。

一度心のシャッターが下りてしまうと、上司がいくら論理的で正しいアドバイスをしたとしても、相手の心には届かなくなってしまいます。

声のトーンも相手の波長に合わせる

話すスピードだけでなく、「声のトーン」を相手に合わせることも非常に重要です。人間は、自分と似た特徴や波長を持つ人に対して親近感や安心感を抱きやすいという心理的傾向があります。

相手が高めの声で明るく話しかけてきたなら、こちらも少し高めの声で応じてみる。逆に、相手が低めの声で落ち着いて話しているなら、こちらもややトーンを落として静かに耳を傾ける。このように声のトーンを相手に同調させることで、相手は「自分と同じ目線で向き合ってくれている」という安心感を抱きます。

これは、相手を承認し、共感を示しているという強力なサインになるのです。

実践のコツは「いつもの2割増し」を意識すること

とはいえ、自分の本来の話し方からかけ離れた不自然な声を作ったり、無理をして相手のペースに完全に合わせようとしたりする必要はありません。やりすぎると、かえって「からかわれている」と誤解されたり、上司自身が疲弊してしまったりするリスクがあります。

実践にあたっての重要なポイントは、自分自身のいつもの話し方の「2割増し」を意識することです。自分のベースは保ちつつ、ちょっとだけ相手のペースやトーンに寄り添うようにシフトしてみる。たったそれだけのわずかな歩み寄りで、不思議と相手には「この人、自分のことをわかってくれてる!」というポジティブな感情や信頼感が芽生えやすくなります。

マネジメントにおいて大切なのは、上司のコミュニケーションスタイルを押し付けるのではなく、部下のリズムを尊重し、対話の土台を作ることです。相手に「ちょっとだけ」寄り添うこの工夫を日常のコミュニケーションに取り入れるだけで、部下との距離は劇的に縮まり、組織全体の風通しも格段に良くなるはずです。

※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)をもとに作成しました。