5~10年間の返済額を抑えて
借入残高が増えていく「ゆとりローン」
池野さんが購入時に選択した住宅ローンの返済方法は、1990年代に住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)が提供していた「ゆとりローン(ゆとり返済)」でした。これは返済期間の5~10年間を「ゆとり期間」と位置づけ、その期間の返済額を極端に抑えることを目的としたローンです。
しかし、返済開始後の返済を抑える代わりに、元金が減らず、未払い利息によって借入残高が増えていくというワナが潜んでいました。
池野さんの場合は35年ローンで借入額は約3000万円、金利は当初年2.5%(1990年代の平均的な水準)と低めに設定され、月々返済額は約5万円でしたが、融資から5年後の43歳の頃に「ゆとりローン」の規定に沿って返済額がアップし、月々約7万円に増加。
さらに11年目の49歳の時にも返済額が一気に上がり、当初の約2倍となる月々約11万円に達してしまいました。追い打ちをかけるように、長女と次女が相次いで私立大学に進学。
退職金だけでは教育費を賄えなかったため、慎太郎さんは住宅ローンとは別に金融機関で教育ローンを組みました。教育ローンの借入額は約500万円、金利年4.0%で月々約4万円の返済が追加されました。
40年以上の超長期ローンも
負担を先送りして返済総額が増える
ゆとりローンは景気が右肩上がりで、給料も増え続けることを前提としていたローンでしたが、バブル崩壊後に長引いた不況が直撃し、池野さんのように返済不能に陥る人が続出し、2000年(平成12年)に販売は廃止されました。
しかし、これはけっして過去の遺物というわけではありません。新築マンションの平均価格の高騰により、年収に対する物件価格の倍率(年収倍率)は上昇を続けており、全国平均では8年連続で10倍を超えています。
東京カンテイが2024年に販売・流通した全国の新築マンションを対象にした調査では、年収倍率は東京都では17倍、神奈川県は14.04倍、京都府は13.89倍となり、年収との乖離(かいり)が拡大しています。
そこで近年注目されるようになったのが、40年以上の超長期ローン。これまでは返済期間の上限のスタンダードは35年でしたが、40年や50年に設定することで、月々の負担を下げることを目的としています。負担を先送りして返済総額が増える点においては「ゆとりローン」と同じ発想の商品と言えます。
それでは、49歳の時点でゆとりローンの返済額が月々約11万円、教育ローンの返済額が月々約4万円となった慎太郎さんはどのような選択をしたのでしょうか。







