家庭を持ったあとも、祖父には複雑な思いを持ち続けていたようで、何かの折に祖父の悪口を母に言っていました。ただ祖父も医師であり、周りの人間からは慕われていたようです。
しかし、祖父のしたことは、実の息子である父からすると許せないことは多くあったようです。詳しくは知りませんが、父の「許せない思い」というのはよく伝わってきました。祖父は私が大学生のときに亡くなったのですが、父は「葬儀には出ない」と言い切り、代わりに私と母が祖父の葬儀に出ました。
『愛の処方箋』(精神科医Tomy、光文社)
実はあとから、一人家に残った父の様子をスタッフから聞いたのですが、父は静かに泣いていたようです。そして祖父が亡くなったあと何カ月かは感情的になっていました。一度も祖父のことを良くは言わない父ですが、私は大学生ながらに思いました。
「父はとても祖父のことを愛していたのだな」と。だから許せないし、ずっと悪口を言っていたのでしょう。そして、何かの折に負けず嫌いな父は言っていました。「俺は自分の父親に認めてほしくてここまでやってきたんだ」と。こんなセリフは愛していないと言えないことです。そしてそれは同時に、父自身の「自己愛」の問題でもあるのです。
それは父の葛藤ですから、そう思ったとしても私は決して口にはしませんでした。父といえども、とてもプライベートなことであり、自分一人で向き合いたいことなのだろうなと思ったからです。ただ、私は自分が父を愛していることは素直に表現しようと改めて思っただけです。
そんな父も、私が30歳になったばかりのときに病気で亡くなりました。私は、喪主として、父への想いをせいいっぱいスピーチとして伝えました。今ごろは、祖父とあの世で上手くやっていると良いのですが。







