医療・ヘルスケア業界全体の革新を目差し疾走する株式会社ミナケア代表取締役の山本雄士氏と、そうした企業の革新をカンパニー・ドクターという立場でサポートする新将命氏。山本氏が考える投資型医療とは?そして求められるリーダーの要素とは?前回から続くおふたりの対話は、新氏が考える年齢を重ねてからの健康のあり方にまで幅広く展開していきます。

真のプロはプロフェッショナリズムを確立している

 もちろん会社には理念が必要ですが、経営力がなければ潰れてしまいます。病院もひとつの会社だから、医療という技術だけでなく、「経営の原理原則」を医療業界で徹底して、経営面を健康に保たなければいけませんね。

山本雄士(やまもと・ゆうじ)
医師・株式会社ミナケア代表取締役
1974年札幌市生まれ。1999年東京大学医学部を卒業後、同付属病院、都立病院などで循環器内科、救急医療などに従事。2007年Harvard Business School修了。
ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャーを兼任。政策提言や講演活動を国内外で行いながら、教育活動として山本雄士ゼミを主宰している。
共著に『僕らが元気で長く生きるのに本当はそんなにお金はかからない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など、翻訳に『医療戦略の本質』(マイケル・E・ポーターら、日経BP社)、『奇跡は起こせる』(ジョン・クラウリー著、宝島社)がある。

山本 たとえば病院のトップとなる院長は医師です。院長は医療のプロですが、経営のプロではありません。院長の経営のパートナーは事務長が担います。だから、院長が自分は経営のプロではなく医療のプロなのだという自覚を持ち、事務長とのパートナーシップをしっかりと築いている病院というのは安定しています。

 少なくともアメリカの場合は、病院経営のプロがいますからね。優秀な三塁手が優秀な監督になるとは限らない。

山本 そのとおりです。これは私がビジネススクールに行こうと思った理由にも大きく関わるんですが、事務長と良好な関係を築き、病院運営を円滑に行っている院長もいますが、概して医師というのは自分以外のプロフェッショナルと付き合うのが上手ではありません。看護師など業界内の人に対してだけでなく、業界外の人に対しても同じです。

 私もさまざまな人に会って、今後の医療業界をどうすればいいのかと相談してきたのですが、業界内の人たちは業界外の人たちのことを「あの人たちは医療のことを何も知らない」と言うし、反対に業界外の人たちは「(業界内の人に)言ってもどうせ聞く耳を持ってもらえない」と言います。しかも、そのすり合わせがされないままにきてしまいました。

 真のプロフェッショナリズムが乏しいんですね。

山本 これは業界内にいる自分が率先してやってみなければ、まず業界内の人にすら話を聞いてもらえないと思ったんですよね。プロフェッショナル同士がお互いを認め合うことでシナジーが生まれていくのですが、もったいないことにそれを生かしきれていないんです。