会社を潰さない経営者であるために

プロフェッショナル同士が手を組めば<br />医療・ヘルスケア業界だけでなく<br />経済界も変わると信じて新 将命(あたらし・まさみ)
1936年生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40年にわたり社長職を3社副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに、経営者や経営幹部を対象とした経営とリーダーシップに関する講演・セミナーをし、国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組む一方で、経営者・経営者グループに対する経営指導、相談役も果たしている。自身のビジネス人生で得た実質的に役立つ独自の経営論・リーダーシップ論は経営者や次世代リーダーの心を鼓舞させ、講演会には常に多くの聴講者が詰め掛けている。
著書に『経営の教科書』(ダイヤモンド社)『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ダイヤモンド社)、『伝説の外資トップが説く 働き方の教科書』(ダイヤモンド社)、『コミュニケーションの教科書』(講談社)など。またオリジナル教材『経営・リーダーシップ実学』やCD教材等も。

新将命 公式サイト

 日本には約300万社以上の法人がありますが、コンスタントに税金を納めつづけている会社、つまり赤字を出さずに収益を伸ばしつづけている会社は30%程度しかないんですよ。以前、赤字病院は全体の80%くらいだと聞いたことがあるんですが、これは正しい数値なんでしょうか。

山本 はっきりとは言えませんが、半分以上でしょうね。病院のタイプによっては80%という話も聞きます。

 医療業界であっても他業種であっても、状況はあまり変わりませんね。先ほど院長と事務長のチームプレーという話が出ましたが、チームプレー以上に経営者の能力が圧倒的に乏しいということでしょうね。

 どんなに優れた社員がいても、それらを束ねて導く優秀な経営者がいなければいけません。院長が優秀な経営者であるために、経営を担当する事務長を自分の周囲に配してチームをつくるという考え方のほうが正しいでしょう。

 そして何度も言いますが、しっかりと理念を見せつづけなければ、会社はすぐに潰れます。

山本 経営理念に関して一つ言わせていただきたいのは、医療系にかかわらず日本の大企業はどこもCSRに取り組んでいますと言っているのですが、対外活動よりもまずは社員とその家族の健康を考えてほしいということです。

 理想論のように聞こえるかもしれませんが、経営者が社員にできることは実際にはたくさんあるんです。しかも、経営上のメリットも大きい。日本の経営者は恐ろしく健康保険のしくみを理解していなくて、あたかも税金と同じ固定費だと思って無視する人が多すぎる。

 もっと社員の体に投資する。それが結果として社員へ、そして会社へ、ひいては社会への貢献につながるというロジックに気づいてくれない。それを今、ミナケアでも一生懸命言っています。一部の先進的な経営者を除いて、なかなか経営側が理解してくださらないんです。

 大人になってから急に意識するのでは無理かもしれませんね。健康管理の重要さを小学生くらいから教えていないと、健康に対する意識の高い人間を育てることはできないかもしれない。

山本 食育などもそうですが、医療の使い方なども学ぶ必要があるのかなと感じています。私もゼミを開催して医療に関連する学生や社会人を中心に教育活動を続けていますが、本当に教育が大事だと思います。