「もし、なかったら」と考えてみる

頭では「当たり前ではない」とわかっていても、感覚的にはそれが当たり前になってしまいます。それを防ぐためには、「もしこれがなかったらどうだろう」と考えてみることです。例えば、普通に寝起きができなくなったら。暖かい布団で眠れなくなったら。お腹が空いたときにコンビニで好きなものを買えなくなったら。そのように想像してみると、ただ毎日無事に過ごせることがいかに幸せなことかに気づくはずです。

食べ物があること、暖かい家があること、電気が使えること、ある程度の安全が守られていること、そして電車が時間通りに動くこと。これらは決して当たり前ではなく、先人たちが長い歴史の中で培ってきた、途方もない積み重ねと奇跡の上に成り立っています。

人間としてこの時代に生まれた奇跡

もっと言えば、自分がこの世に存在していること自体が奇跡です。もし輪廻転生があって、ボウフラとして生まれていたら一瞬で命を終えていたかもしれません。セミとして生まれていたら、何年も土の中で過ごし、地上に出てわずか1週間ほどで死んでしまう運命だったでしょう。ゾウリムシだったら……と考えることもあります。

そう考えると、この時代に人間として生まれてきていること自体が奇跡であり、すべてがありがたく、一度きりしかない尊いものだと思えるはずです。「これらがすべてなかったら」と想像することで、「今あって嬉しいな、ありがたいな」と感じながら毎日を楽しく生きることができます。

幸せのハードルを下げ、心の回復力を高める

人は毎日あるものを「当たり前」と感じ、刺激を感じなくなります。すると、「もっと出世したい」「一角の人物になりたい」「高級車に乗りたい」などと、どんどん欲が出てきてしまいます。大きな変化や新しい刺激を得て、脳内のドーパミンが出ると、それを「幸せ」だと錯覚してしまうのです。

しかし、贅沢にはきりがありません。気づけば本当に大切なものを疎かにしてしまうことにもなりかねません。人間は「喉元過ぎれば熱さを忘れる」生き物です。だからこそ、過去のつらい経験や、「もし今の生活がなくなったら」ということを、毎日定期的に考える時間を作ってみてください。

いろんなものを欲しがってイライラしたり嫉妬したりするよりも、「今の生活があるだけで十分幸せだ」と思うだけで、幸せのハードル(閾値)が下がります。そして結果的に、それがストレスに対する耐久力、いわゆる「レジリエンス」を高めることにもつながります。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。