絶妙な価格設定と
需要の掘り起こしで大ヒット
さて、ここで重要なことは同社が「5分100円」という価格を設定していることです。
独居老人の方からすると真剣な困りごとである「インターホンの電池の入れ替え」は、誰にでもできる簡単なことすぎて、知人や代行業者に依頼することすらできない状態です。そんな悩みを抱えている人の前に、「5分100円で、ちょっとした困りごとをお引き受けします!」と申し出る人が現れると、「お願いしてみようかしら……」と考える人が出てきます。
この時、5分100円という金額も絶妙です。30分で600円、1時間の作業をお願いしても1200円ですから、独居老人の方からすると孫や近所の子どもにお手伝いやおつかいをお願いした際のお小遣いという感覚で、「ちょっとした困りごと」の代行を「お願いできるかしら」と依頼することが可能になります。
『ライフスタイル起業~ちょっと働き、ほどよく稼いで、ごきげんに生きる。』(高橋勅徳、大和書房)
いうなれば株式会社御用聞きは、5分100円という価格を媒介にお客さまとコミュニケーションを図り、自社が提供できる需要を掘り起こしているのです。これは、「潜在的需要とそれを満たす製品・サービスを構想し、その製品・サービスを提供するために必要なコストから価格を割り出した上で、その価格で購入してくれる実際の顧客数をシミュレートして事業としての成長性や継続性を考えていく」という、一般的な企業経営の考え方とは真逆の発想と言えるでしょう。
この「まずは自分たちの作業への価格付け」を行った株式会社御用聞きの戦略は、極めて合理的です。5分100円という金額を提示することで、「してほしい困りごと」をお客さまが考え、提案してくれるため、事前の市場調査は必要ありません。
また、5分100円という価格を手がかりにして、お客さまの「これをやってくれない?」というオーダーを具体的に掘り下げていくことができます。専門的な技能や知識、資格が必要な依頼は対応可能な専門業者につなぎつつ、御用聞きは「誰にでもできる作業」を中心に仕事を選択し急成長中のソーシャルビジネスとして注目を集めているのです。







