
スポットワーク事業者の最大手タイミーが、ビジネスの根幹に関わるルールや条件を記した「利用規約」を大量に改定していることが分かった。スポットワークビジネスは、スマートフォン一つあれば即日で稼げる手軽さがある一方で、闇バイトなど不正利用の温床となるリスクが明らかになっている。特集『大企業が賃金を収奪!「階級社会」の不幸』の#3では、タイミーが変更した利用規約の中身を明らかにする。急成長を遂げたスポットワークビジネスだが、市場の拡大に法整備や運用が追いついていない実態があらわになった格好だ。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
登録ワーカー数は1000万人を突破
スキマバイト市場の「光と影」
スマートフォンのアプリを使って、単発・短時間の仕事を求める労働者と人手不足に悩む企業をマッチングさせるスポットワーク(いわゆるスキマバイト)ビジネスが急成長している。
そのスキマバイト事業者の最大手タイミーが、3月17日、ビジネスの根幹に関わるルールや条件を記した「利用規約」を大量に改定していることが分かった。
タイミーは2017年8月に小川嶺社長が創業。短期労働を求める労働者と急な人手不足に対応したい企業をリアルタイムでマッチングするプラットフォーム事業者として人材サービスビジネスに参入した。
タイミーが斬新だった点は二つある。
一つ目は、スキマ時間に即日で働けるという労働者のニーズと、急な人手不足に対応したいという企業のニーズを的確に捉えたビジネスモデルを構築したこと。従来のアルバイトや派遣労働のように面接や履歴書の提出といった採用プロセスを必要とせず、スマホのアプリ上で即座に仕事を見つけてすぐに働ける。その即時性が、従来の人材ビジネスでは難しかった「超短時間労働」市場を掘り起こした。
二つ目はテック企業らしいアプローチで、効率的なマッチングシステムを編み出したことだ。AI(人工知能)を駆使してマッチングの精度を上げたり、労働者と企業の双方が評価を行うレビューシステムを導入したりすることで、双方の信頼性を高めることができた点だ。
それに加えて、外部環境でもフォローの風が吹いた。コロナ禍を経て、単発業務の需要が急増したり、副業を解禁する企業が増えたりと、スポットワークのニーズが高まったのだ。
実際にタイミーの累計登録ワーカー数は1000万人を突破し登録事業者数は15.9万事業者に達している(24年12月時点)。
タイミーの業績は絶好調だ。22年10月期には営業利益と最終利益が共に黒字化。24年7月の東証グロース市場へ上場を弾みに、同年3月期は売上高268億円、営業利益率15.8%を計上する高収益企業に成長した。
もっとも、急成長には課題が付き物だ。スポットワーク市場の急拡大に、法整備や運用が追いついていない実態があらわになっている。すでに昨年、スポットワークが闇バイトなど不正利用の温床となったことは記憶に新しい。
それでは今回、タイミーが実施した「大量の規約変更」とはどのようなものだったのか。次ページでは、その代表例を明らかにしたい。タイミーには、労働者(ワーカー)向けと企業(事業者)向けの2種類の利用規約があり、その両方を大幅に改定していたことが分かった。