イタリア料理の価値をご存じの方であれば、イタリアの職人がパスタやピザの材料はもっとも精製度高く挽いた白い小麦粉ーーファリーナ00ーーに限ると考えていることもご存じだろう。そして、食料需給の動向と平均寿命のデータをさっと調べれば、イタリア人はドイツ人より年間55%も小麦の消費量が多く、ライ麦を混ぜた茶色いバウアンブロートというパンを好むドイツ人よりも精製度の高い小麦粉を食べているのに、平均寿命がドイツ人より2歳も高いことがすぐにわかる。

 ということは、イタリアのもっとも精製度高く挽かれた小麦粉が健康を悪化させているのに、天候か言語かハンドサインの違いによって、悪影響が打ち消されているとでもいうのだろうか?

図表・平均寿命と、小麦1人当たり年間供給量(2022年)同書より転載 拡大画像表示

平均寿命が長い欧州5カ国
その小麦摂取量は?

 スペインのデータを見ると、小麦粉を凶悪殺人犯に見立てたデイヴィスの説がいかに根拠がないものかがよくわかる。1960年代、スペインで遅まきながら経済成長が始まった頃、国民が多様な食生活を送るようになったので1人当たりの小麦消費量は約3分の1に減少したが、その後は高水準を維持しており、1970年には1人当たり101キログラム、2020年には100キログラムとほとんど変化していない。

 にもかかわらず、この50年間で平均寿命は12歳ほど高くなった。この寿命の延びは、米を主食とする日本の記録(13歳)に匹敵している。その日本ではこの50年間で小麦の消費量が10%以上増加し、近年、小麦消費量がスペインより10%ほど低くなっているカナダを大幅に(20%ほど)上回っている。

 さらに日本を除けば、人口が1000万以上の世界の国のなかでは、イタリアとスペインがもっとも寿命が長いのだ。