日本の個人資産は、2024年6月末時点で金融資産だけでも約2212兆円(日本銀行「資金循環統計」)に上ります。
さらに、内閣府の推計によれば、土地や住宅といった非金融資産を含めた家計全体の資産総額は2023年末時点で約3350兆円にも達していますから、仮に世代交代を35年サイクルとすれば、毎年100兆円前後が相続で動いているのです。
相続税の積極的な制度改革で
若い世代の手取りも増やせる
ところが、多くの家庭は基礎控除の範囲内で非課税となります。だから課税対象となる人はごく一部で、相続税がかかるのは全体の1割にも届きません(2022年度で約9%)。
さらに、数少ない課税対象者でも実効税率は平均7%前後と決して高くはなく、また、生前贈与や各種特例による節税も多いことから、結果的に税収全体では実効1%の状態が続き、最近増えたといえ3兆円程度にとどまっているのです。
個人的には相続税は100%でもいいくらいだと思っていますが、たとえば実効10%程度まで引き上げるだけでも、年10兆円、消費税率でいえばおよそ4%分に相当する財源が生まれます。
これだけの財源があれば、年金の減額を回避したり、保険料の負担を軽減したり、介護・医療の人件費を適正化するための原資に充てることも現実的に検討できるはずです。
また、日本人の場合、多くの遺産を子どもに残したい人が多いので、今のままだと相続財産にあまり手をつけず、とにかく貯めておこうと考えます。
しかし、相続税をもっと高くすれば、「税金で取られるくらいなら、今のうちに使ってしまおう」という心理が生まれるはずです。
こうして高齢者の消費が促されれば、それは経済を上向かせることにつながりますから、結果として若い世代の手取りを増やすことに大きく貢献するはずです。さらに高齢者向けの商品開発やサービスの発展も望めるでしょう。
つまり、相続税の積極的な制度改革は「富の再分配」という意味だけでなく、社会全体にお金を循環させるのにも非常に有効です。
だからこそ、一刻も早く取り組むべきだというのが私の考えなのです。
手取りが増えないのは
高い社会保険料のせいではない
若い人たちが高齢者を悪者にしたくなるのは、「高い社会保険料のせいで手取りが増えない」と思い込んでいるからです。
しかし、手取りが増えない本当の理由は、そもそも差し引かれる前の給料が増えていないせいです。
多くの人は給料が上がらないことを国のせいにしたがりますが、本当の責任は企業、特に大企業にあります。







