大げさではない。本当にそういうことを思う人がいるので、コミュニケーションは難しいのだ。

 でも、それを防ぐのは難しくない。「聞いた情報」をもとに話せばいい。

 先輩が「もう10年目だけどさ」と言ったときにはじめて、「10年目なんですね。2015年入社ですかね」と客観的事実だけを返してあげれば、まず地雷を踏むことはないのだ。

 コミュニケーションは一種の情報戦である。

 そのため、よく知らない人同士の会話が、互いに地雷を踏まぬように、究極の事実である「天気の話題」から入るのは定石だ。

「自分語り」をさせれば
その人の価値観まで窺い知れる

「聞く」のが大事な理由の2つ目は、「相手をいい気分にさせる」効果があるからだ。

 大半の人は「自分語り」が大好きである。それは、多くの人が承認欲求を抱えており、褒められたいのに、褒めてくれる人がいないからだ。友だちも、大事なパートナーですら、そんな簡単に「黙って話を聞き、褒めてくれる」人は、そうそういない。そのため、「話を聞いてくれる人」は重用される。少なくとも、嫌われることはほぼない。

 私のコンサルタント時代の上司は「お客さんと話すときには、聞く時間を少なくとも8割、話す時間は多くても2割にせよ」と、コンサルタントたちにきつく命じていた。

 ここからが、今回の本題だ。

 じつは、お気づきだと思うが、この話は「コミュニケーションレベルの高い人は、当然のごとく身につけている技術」である。

「できる」営業や、人望のある経営者のような、ごく一部のコミュニケーションお化けたちも、それを駆使してくる。

 たとえば、「優しい先輩」「できる管理職」「人望のある経営者」たちは、相手にしゃべらせようとしてくる。

 そもそも、彼らは自分語りで承認欲求を満たす必要がない。実績で十分、承認欲求を満たせているからだ。

 そのため、ほぼ例外なく「コミュニケーションお化け」たちは、「聞く側」に回ることで、抜け目なく「こちらの承認欲求を満たす側」に回ろうとしてくる。