腹膜透析に対応できる
医師が少なく普及しにくい
通院に縛られることなく、日常生活を送りながら透析ができるというメリットは大きいといえます。しかも在宅血液透析のように大きな機械を自宅に持ち込む必要はありません。清潔な環境があれば、職場や旅行先でもバッグ交換を行うことができます。場所を選ばずにできる、より自由度が高い透析といえるでしょう。
また腹膜透析は、1日かけてゆっくり透析するので、血圧が下がることもなく、痛みもありません。からだにやさしい透析ですから、特に高齢の患者さんにこそ推奨される治療法だと考えています。
ところが、なかなか普及が広がらないのは、腹膜透析に対応できる医療機関や腹膜透析に積極的な医師が少なく、患者さんに選択肢として提示されることが少ないためです。
日本では、透析というとほとんどが施設での血液透析です。日本透析医学会の「慢性透析療法の現況」によると、2023年に新規に透析を導入した慢性腎臓病患者のうち、血液透析での導入は93.9%、腹膜透析は6.1%と大きな差があります。
痛みも伴わず
からだへの負担も少ない
腹膜透析は、からだにやさしく、高齢者の方にこそ受けてほしい透析だと私は考えています。しかし制度的な問題もあり、普及が進まないのが現状です。実際の現場では、どのような状況に直面するのでしょうか。
特別養護老人ホーム(特養)に入所する80代の男性。腎機能が低下して透析が必要になりました。
特養は介護度が高い高齢者が対象の公的施設です。この方は、移動は常に車椅子でしたが、会話はごく普通にできる状態でした。治療法の選択肢についてお話しすると、「穿刺は嫌だ。腹膜透析がいい」と即答。「穿刺」とは、血液透析で血液を体外に取り出し、浄化した後に再び体内に戻すために、シャントに針を刺すことをいいます。血液透析ではこの穿刺が毎回必要になり、中には痛みを訴える方もいらっしゃいます。苦痛を回避したいというシンプルな理由でしたが、80代での初めての透析として、腹膜透析の選択はとてもよかったと思います。







