腹膜透析は1日かけてゆっくり静かに行う、からだにやさしい透析です。血液透析に比べて浄化能力が弱いという弱点はありますが、そもそも高齢の方は食事量も活動量も現役世代に比べれば少ないわけですから、からだの中に溜まる尿毒性物質(尿素、窒素、クレアチニンなど)を一気に浄化しなければならないということもありません。からだへの負担が少ないことが一番のメリットです。
医療従事者ではない介護士は
バッグ交換の手伝いができない
この方も腹膜透析を淡々と受け入れ、「こっちを選んでよかった。体調もよい」と満足そうでした。そうして3年ほどを安定して過ごされた後、最期まで透析を続けながら、穏やかに息を引き取られました。
埼玉県内にあるこちらの特養は、施設内に透析ができるクリニックを併設する、全国でも珍しい高齢者施設です。私はここで血液透析を行い、週1回、内科と透析の担当医として患者さんの診療にあたってきました。そうした関係性の中で実現した腹膜透析でしたが、私自身も高齢者施設での腹膜透析の導入は初めてで、戸惑うことも多々ありました。
自己管理が基本の腹膜透析も、介護度が高い患者さんが当事者ですから、すべて現場スタッフの労力に頼ることになります。しかし医療機関ではないという理由で、こうした労力はまったく算定されません。しかも患者さんにとっては生活の場ですから、夜間のバッグ交換も必要になります。通常業務がある看護師はそこまで手が回らず、生活支援ができるはずの介護士は、医療従事者ではないという理由で、バッグ交換などのサポートも許されないのです。
からだへの負担が少なく、前向きに生活できる治療法があり、必要としている患者さんもたくさんいるのに、残念でなりません。
80代で現役写真家の患者
透析にかける時間はない
私のクリニックに、セカンドオピニオンとして話を聞きたいと訪れた80代の男性がいました。腎障害があり、大学病院の腎臓内科に通っているとのことでしたが、担当医から透析導入の話が出て驚き、“奥の手”を探してやって来たようでした。







