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命をつなぐ医療である一方、患者の生活や心に大きな影響を与える、透析治療。しかし通院の負担は大きく、「自分らしく生きたい」と願う人にとってはできれば避けたい治療法でもあります。在宅血液透析や腹膜透析といった新しい治療法は、患者にとって大きな可能性をもたらす選択肢である一方、実施するには想像以上の困難も……。新しい治療法を望む患者に寄り添い、併走してきた腎臓内科医が、その難しさを振り返ります。※本稿は、医師の鈴木孝子『からだの声を聴く習慣 腎臓内科医が教える幸せな人生への処方箋』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
自分の可能性を広げるために
在宅血液透析を希望した女性
28歳で1型糖尿病を発症し、43歳で糖尿病性腎症の増悪のため血液透析を導入した女性がいました。大学卒業後は仕事をしながら日本舞踊の趣味を持ち、車を乗り回すなど、活動的で快活な方でした。
彼女は56歳のとき、当クリニックを訪れ、「在宅血液透析を行いたい」と希望されました。前年に母親を亡くし、現在は独り暮らし。「自分の可能性を少しでも広げたい」と前向きな思いからの希望でした。
母親が存命のときから「少しでも一緒に過ごしたい」という思いで、在宅血液透析に興味を持っていたことを、朗らかに話してくれました。母親を亡くした悲しみや、病気のつらさも笑顔で語る姿に、私は強く心を打たれました。
家の中に介助者がいないため、在宅血液透析の適応にはならないと考えられましたが、何度も足を運んでくれる彼女の姿に、何とか希望を叶えてあげたいと強く思いました。
まずは私のクリニックに転院してもらい、在宅透析に適した鎖骨下からの長期留置カテーテルを挿入しました。約3カ月間、1人で安全に在宅透析を行えるよう、すべての手順の指導と訓練を重ねた末、ようやく在宅血液透析へと移行できるようになりました。彼女も希望に燃えていました。







