ところがその後、血栓予防の薬剤の量を調整しながら糖尿病専門医にも定期的な受診をしていたにもかかわらず、低血糖による発作が起き、救急搬送される事態が何度も起こりました。私もそのたびに駆けつけ、入院先にお見舞いに行きました。

 そして、なんとか体調が持ち直し、ようやく在宅血液透析を開始できるようになりました。自宅に透析装置を搬送し、設備を整え、私とスタッフ立ち会いのもとで、最初の透析を行いました。そしていよいよ次は彼女自身で初めて行う2回目の透析……と思っていた矢先、彼女が脳出血を起こし、さらに脳梗塞も発症して長期入院となってしまいました。

病状は改善しないまま
入退院を繰り返す

 彼女は気丈に頑張ってくれていましたが、在宅透析を再開してもトラブルが続き、また入退院のくり返し。やむなく一時的に在宅での透析をあきらめ、自宅近くのクリニックで透析を受けてもらうことにしました。私はまるで母親のように、彼女の自宅に荷物を取りに行ったり、入院先への付き添いを続けました。

 その後も、カテーテルからの感染症や低血糖症状で救急搬送されることが続き、入院は長期化し、脳梗塞のリハビリも必要になりました。私のクリニックで施設血液透析を受けながら、在宅透析復帰を目標にリハビリを行いましたが、脳梗塞の影響で運動能力が落ち、杖を使っても歩幅10cm程度のゆっくりした歩行、階段も一段ずつ上るのがやっとという状態でした。

 状況を改善しようと、膵腎同時移植(1型糖尿病の患者は膵臓の機能も失われていることから同時に移植をする)、あるいは腎移植ができればと検討を重ねましたが、1型糖尿病の低血糖による脳梗塞のリスクも考慮され、ドナー待ちという移植の現実も厳しく、結局断念せざるを得ませんでした。

 私自身、「在宅血液透析をなんとか叶えてあげたい」という思いからサポートを続けましたが、彼女のからだの状態を考えると、もはや在宅透析は困難な状況でした。最終的に、「残念ですが、あきらめます」という彼女の申し出を受けて、近郊の透析クリニックを紹介し、そこで維持血液透析を行っていただくことになりました。