【一発アウト】タワマン購入1年後、1100万円請求された買主の盲点
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本記事の書き手は棚田健大郎さん。1年間必死に勉強したのに宅建に落ちた経験をきっかけに、「勉強が苦手な人でも続けられる方法を作ろう」と決意。棚田さんの勉強法をまとめた『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の刊行を記念して、本記事をお届けします。

【一発アウト】タワマン購入1年後、1100万円請求された買主の盲点Photo: Adobe Stock

買主に届いた1100万円の納税通知

 本日は「タワマンの怖い話」についてお話します。

 都内のタ都内のタワーマンションを購入した買主のもとに、購入から1年後、突然1100万円もの納税通知が届いた――。こう聞くと、多くの方が「なぜ買った側にそんな税金が来るのですか」と驚くはずです。通常、不動産の売買で税金が問題になるとき、まず思い浮かぶのは売主側の譲渡所得税です。物件を売って利益が出れば、その利益に課税されます。ところが今回のケースでは、売主ではなく買主の側に高額な納税通知が届きました。

 この事例が示しているのは、不動産取引には「知らなかった」では済まされないルールがあるということです。しかも、そのルールは一般の買主だけでなく、不動産会社の担当者でも十分に理解していないことがあります。だからこそ、これを他人事として見過ごすのは危険です。

問題の発端は「売主が非居住者」だったこと

 今回、買主が購入したのは都内の中古タワーマンションで、目的は自宅用ではなく投資用でした。人に貸して賃料収入を得たり、将来売却して差益を狙ったりするための購入です。契約自体は通常通り進み、買主側にも売主側にも仲介業者がついていました。ところが、購入から1年後になって税務署から届いたのは、約1100万円の納税通知書でした。買主にしてみれば寝耳に水であり、「そんな税金を払う話は聞いていない」という感覚になりやすい状況です。

 問題の発端は、売主が「非居住者」だったことにあります。ここでいう非居住者とは、単に外国人という意味ではありません。日本国内に住所があるか、または1年以上継続して居所がある人以外は、所得税法上の非居住者とされます。つまり、外国籍かどうかではなく、生活の本拠がどこにあるかが判断基準になります。日本人でも海外で生活していれば非居住者になりますし、逆に外国人でも生活の中心が日本にあれば居住者になります。

買主に生じる「源泉徴収義務」とは何か

 この「非居住者」が日本国内の不動産を売却する場合、買主は重要な義務を負うことがあります。それが、売買代金の一部を差し引いて税務署に納める「源泉徴収義務」です。非居住者等が日本国内の不動産を売却し、その譲渡対価を受ける場合、買主は原則として支払時に対価の10・21%を源泉徴収して納付する義務を負います。つまり、本来は売主にかかる税金であっても、徴収と納付の責任が買主側に生じることがあります。

 このルールを知らないまま取引を進めると、今回のような深刻な事態に陥ります。たとえば1億円の物件であれば、買主は売買代金の10・21%を源泉徴収しなければならないとされています。簡単にいえば、売主に1億円をそのまま支払うのではなく、およそ9000万円を売主に渡し、残り約1000万円を税務署に納める必要がある、というイメージです。もしこれをせず売買代金を満額支払ってしまうと、本来差し引いておくべきだった税額分について、あとから買主自身が負担せざるを得なくなります。

「居住者だと思う」という説明を信じた結果

 今回のケースでも、まさにそれが起きました。買主はこのルールをまったく知らなかったわけではなかったそうです。実際、不動産取引に関わる立場でもあり、「売主が非居住者なら買主に源泉徴収義務が発生する」という知識自体は持っていました。しかし、売主側の仲介業者から「売主は居住者だと思います」と口頭で説明され、それを前提に「今回は源泉徴収の必要はない」と判断してしまいました。さらに、重要事項説明でもその点には触れられないまま、契約は成立しました。

 そして1年後、税務署から1100万円の納税通知が届きました。買主はあわてて売主側の仲介会社に問い合わせたものの、当時の担当者はすでに退職しており、説明内容を裏付ける書面も残っていなかったといいます。口頭でのやりとりだけでは、「そう説明を受けました」という主張を立証するのは難しくなります。その結果、買主は税務署に対して納税義務を免れることができず、支払うしかない状況に追い込まれました。

「自分の税金ではない」では通らない

 ここで怖いのは、買主が「自分の税金ではありません」と思っても、その言い分が通らない点です。税務署から見れば、買主には最初から源泉徴収義務があり、その義務を果たさなかった以上、未納分を納める責任は買主にある、という整理になります。売主から預かっていなかったことは、免責の理由にはなりません。つまり「知らなかった」「聞いていなかった」「仲介会社にそう言われた」といった事情があっても、納税そのものは回避できないのです。

 もっとも、すべての不動産取引でこの義務が発生するわけではありません。個人が自分や家族の住まいとして購入する場合で、売買価格が1億円以下であれば、原則として源泉徴収は不要とされています。一方で、投資用物件である場合や、1億円を超える物件である場合には、このルールが問題になる可能性が高くなります。今回のように投資用で購入していれば、まさに注意が必要なケースです。

高額物件ほど事前確認が欠かせない

 近年は都内を中心に、1億円を超えるマンションも珍しくなくなっています。自宅用であれ投資用であれ、高額物件の取引では「売主が居住者か非居住者か」を曖昧なままにしてはいけません。しかも、国籍だけで判断できない以上、「外国人だから危ない」「日本人だから大丈夫」といった思い込みも禁物です。生活の本拠がどこにあるのか、必要な場合には書面で確認し、税務上の取扱いも明確にしておく必要があります。

 今回の事例が突きつけているのは、不動産取引では契約内容だけでなく、税務上の前提確認がいかに重要かという現実です。仲介業者がついているから安心、不動産会社の担当者がいるから大丈夫、とは言い切れません。説明が曖昧なまま進めてしまえば、あとで想像もしなかった金額の負担が自分に降りかかることがあります。

「知らなかった」では済まされない

 タワマンを買っただけのつもりでも、条件次第では「1100万円の納税通知」が届きます。そうした事態を防ぐためには、売主の居住区分を必ず確認すること、口頭説明だけで済ませず証拠を残すこと、そして高額物件や投資用物件では源泉徴収義務の有無を事前に詰めておくことが欠かせません。知らなかったでは済まされないルールが、確かに存在しています。

(本原稿は、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の著者による寄稿です)