1週間後、再びやってきたお父さんは「血のにじむような努力」をして、なんとかしからないで過ごしたそうです。「しかりたい気持ちを抑えることがこんなに難しいとは知りませんでした。わたしも息子に似た『がまんできない特性』があるのかもしれませんね」と笑っていらっしゃいました。たいした人だと思いました。息子さんは1週間前よりも明らかに落ち着いていて、父と子の間にやさしい空気が流れていました。
その後、この子のご両親は本当にしからずに育てたそうです。先日、久しぶりにご連絡をいただき、無事に希望の大学に合格したと教えてくれました。誰もが知っている有名な大学です。「おできになるんですね」とお話ししたら、お母さんはうれしそうに「はい、よくできる子です」とおっしゃっていました。
問題行動の裏に隠された
「満たされない思い」
わたしは長く臨床の現場で、多くの親子に会ってきました。その経験から確実に言えるのは、親がしかればしかるほど、子どもはしかられる子になっていくということです。親が心配すればするほど、心配な行動を続けるのです。それはもう確実です。その悪循環を断ち切らなければ、子どもの情緒を安定させることはできません。その場合、どちらが先にがまんするのか。答えは明白です。大人が先です。大人が先に変わるしかないのです。
先ほどの子にはADHD(注意欠如・多動症)の傾向がありました。しかってもしからなくても、その特性が消えるわけではありません。しかし、親がしかりすぎをいったんやめることで子どもの情緒が安定し、その子に合った対応をとることが可能になります。得意と不得意が大きい子なので、得意の部分をちゃんと見極め、そこを伸ばそうと本人も前向きにとらえることができるようになるのです。好循環が始まるのです。
雑誌の悩み相談にも、「子どもをしかりすぎてしまう」「親子で毎日バトルしてしまう」という相談のお手紙は非常に多く寄せられます。「やさしく言い聞かせても言うことを聞かない」「すぐにダダをこねる」「言い聞かせても、説明しても納得してくれない」「こんなにワガママで心配です」。そんな悩みがつづられています。







