謎の粒子が頭痛の種に
TSMCは「歩留まり」を神聖視
それは、うまくいった。
ただ、2018年、新しい露光装置は期待したほどうまく機能しなかった。装置内を漂う謎の粒子が頭痛の種になり、ウェーハ1枚からとれる使用可能な半導体チップの数が減ってしまっていた。TSMCでは歩留まりは神聖視されていた。数百の高度なプロセッサを搭載したウェーハを年間1500万枚以上生産した場合、1%の差は無視できないどころか大きな意味がある。
EUVの線は極めて細いため、少しでも汚染があると大きな影響が出る。ASMLは、TSMCが発見したエラーの数を「週当たりのパーティクル(粒子)数」として記録している。台湾の人々は、マスクにスズの粒子が付着すると激怒する。被害は深刻で、このミスは露光のあらゆる段階でウェーハに繰り返される。マスクを「ペリクル」と呼ばれる保護フィルムで覆うことで粒子を防ぐようになっているが、サングラスについた汚れのように、それでも透けて影響を与えるのだ。この汚れの層がどれだけ薄くても、貴重なEUV光の一部を遮ってしまうためウェーハの露光に時間がかかることになる。どんな解決法でも、それなりのコストがかかる。
ASMLに可能な限り多くの装置を発注
競合に行く装置が減る「一石二鳥」
新しい装置を入れて、TSMCはチップに微細な線を描くために二重露光や三重露光をする必要が少なくとも当面はなくなった。これで費用と時間を節約できるが、その習得には時間がかかる。この過程は厳密には科学ではなく、試行錯誤と調整作業と言える。彼らは早い段階から「ウェーハの動き」に関するデータを収集しており、データアナリストはこの情報を活用して歩留まりを向上させている。データを大量かつ早く得るために、TSMCはASMLにも可能な限り多くの装置を発注している。これは一石二鳥で、台湾に装置が1台多く行けば、韓国の競合に行く装置は1台減るということだ。フェルトホーフェンでは特に最新世代の装置の生産能力が限られており、半導体メーカーはこの不足さえ有利に使うのだ。
『FOCUS ASMLの流儀――地球上で最も複雑な装置をめぐる勢力争いの裏側』(マルク・ハインク著、化学工業日報社)
Key Visual by Noriyo Shinoda







