塾にも行きたい、ゲームもしたい、サッカーもやりたい。あれもこれもと手を出しては中途半端に終わる我が子を見て、「もっと計画的に動きなさい」と言いたくなったことはないだろうか。じつは、そこで「やり方」を教えてしまうと、男の子の成長の芽を摘んでしまうかもしれない。進学塾VAMOS代表・富永雄輔氏の『男の子の学力の伸ばし方』には、男の子特有の脳の発達と行動パターンに基づいた学習法が体系的にまとめられている。本連載では、本書の内容から、子どもの計画・理解・反復・習慣のプロセスを体系化した「男の子の特性」に基づく学習法をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)
Photo: Adobe Stock
「教えたがる親」が成長を止める
小学生の男の子は、とにかく「なんでもやってみたい」生きものである。塾、ゲーム、水泳、野球、サッカー――やりたいことを片っ端から並べ、しかも「本当にそれが全部できるのか」を考えもせずに突っ走る。
当然、どれも中途半端になる。親としては「優先順位を考えなさい」「まず振り返りなさい」と口を出したくなるだろう。とくに仕事で段取りを重視しているビジネスパーソンの親ほど、要領の悪さが目につくはずだ。
しかし、著者はここで「やり方」や「答え」を直接教えないほうがいいと述べる。男の子は「教えられた」という事実そのものを忘れてしまうため、どうすれば結果につながるのかが腹に落ちないのだという。
男の子が大きく成長するのは、「大変だったけれど自分でやり遂げた」と実感できたときです。教えてしまうことは、その芽を摘んでしまうことにつながります。(『男の子の学力の伸ばし方』より)
つまり、大人が先回りして正解を渡すほど、子ども自身の「やり遂げた」という実感が薄れてしまうのである。これは勉強だけの話ではない。日常の小さな段取りや選択の場面でも同じことが言えるだろう。
たとえば、宿題を3つ抱えた子どもが「好きな算数からやる」と言い出したとする。親の目から見れば苦手な国語を先に片づけたほうがいいのは明らかだ。しかし本書の考え方は、あえてその順番でやらせて時間が足りなくなる経験をさせたほうが、次から自分で段取りを考えるようになるというものだ。
「まずやらせる」が鉄則である理由
では、やりたいことが山ほどある男の子に対して、親はどう接すればいいのか。著者の答えは明快だ。まずはなんでもやらせてみることである。
本書には、「やらせないでおいて『それは必要ない』と言っても、本人は納得しない」と書かれている。納得しないまま禁止されると、いつまでも「自分はできるはず」という思いが消えず、次に進めなくなるのだ。
このように、思いついたことはなんでもやりたいのが男の子です。だから、親が「こうしなさい」と言うよりも、やらせて失敗させたほうがいいのです。男の子は失敗からのリカバリーが非常に早く、起き上がりこぼしのように復活しますから心配いりません。(『男の子の学力の伸ばし方』より)
ここで大切なのは、男の子には「予見力」がまだ十分に備わっていないという点だ。女の子と比べて脳の発達に差があり、「やる前に想像して判断する」ことが苦手な傾向がある。だからこそ、頭の中でシミュレーションするのではなく、実際にやってみて検証するというプロセスが必要になる。
著者はこれを「トライ&エラー」と表現する。失敗を繰り返す中で「この方法はダメだった」「こっちのほうがうまくいく」と自分で気づいていく。本書では、こうしたトライ&エラーの先にある「できなかったことが、自分の工夫や努力によってできるようになるという経験」こそが、子どもの生きる力になると述べられている。
親は「すぐに手を貸さない」を貫く
とはいえ、あれもこれもやりたがっては中途半端に終わる子どもを前にして、黙って見ているのは親にとって簡単なことではない。とくに母親にとっては、計画性のない行動が理解しがたく、イライラの原因になりやすいだろう。
しかし本書は、ここで親がすぐに手を貸さないことの大切さを強調している。頑張れば自分で起き上がれる程度の小さなつまずきを経験させ、親はすぐに助け船を出さないようにする。それが、折れにくい強い心を育てるのだと著者は述べる。
中学受験を考える家庭であれば、小学3~4年生のうちからこうしたトライ&エラーの機会を意識的につくっておくとよいかもしれない。6年生になってからでは、試行錯誤をする時間的余裕がなくなってしまう。早い段階で「自分なりのやり方」を見つけた子どもほど、その後の学習の密度が格段に上がるのだろう。
答えを教えたくなる気持ちをぐっとこらえて、まずはやらせてみる。そのちょっとした「親の我慢」が、男の子の学力と心を大きく伸ばす第一歩になるはずだ。




