キリンHDは「虎の子」協和キリンを完全子会社化するのか?売却するのか?新薬頓挫で変わる潮目Photo:医薬経済社
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

“マリック丸”にとって幸先悪い船出になった。

 協和キリンのことである。マリックとは、同社初の外国人トップ、アブドゥル・マリック社長。この3月には最高経営責任者(CEO)の座も宮本昌志会長から引き継ぎ、本来であれば新体制を言祝ぐ時期のはずだった。

 しかし、現実に起きたことはその真逆。次世代を担う大型品「ロカチンリマブ」の開発中止という予想外の事態が待っていた。

株式市場は混乱

 ロカチンリマブとは、抗OX40モノクローナル抗体で、中等症~重症のアトピー性皮膚炎、同じくコントロール不十分な喘息、結節性痒疹を対象に協和キリンが開発を進めてきた。現在の主力品「クリースビータ」が32年以降、主立った国・地域で順次特許期間満了を迎えるのを前に、それに代わる存在とされてきた。最終治験も概ね良好な結果。26年上半期にも米国で承認申請を予定し、実用化まで秒読みの段階だった。

 だが、3月3日午後10時、突如、「現在実施中のロカチンリマブに関するすべての臨床試験を中止することを決定」したと発表した。最新の安全性情報を分析し直したところ、「想定されるベネフィットに対して潜在的リスクが上回る可能性があるとの結論」に達したという。安全性に問題が認められたため、製品化を実質的に諦めた。

 2月2日の説明会では「ピーク時売上高2000億円超」と高らかに謳い上げたばかりのロカチンリマブの開発中止は、当然、市場に混乱をもたらした。4日の同社株価は前日比500円ストップ安の2231円。たった1日で時価総額2600億円あまりが蒸発したのだ。複数の証券会社がレーティングを下げるなどしたこともあり、その週の金曜日、3月6日の終値は2251・5円と3日終値の2731円に遠く及ばない。

 もちろん協和キリンも発表翌日の4日午前8時30分、日本の株式市場が開く前に機関投資家・アナリスト向け説明会を急遽開催し、動揺を抑えようとした。

 この日の論点は大きく2つ。第1が、ロカチンリマブがなくなった分の穴をどうするのかということだ。2000億円規模の売り上げをもたらすというロカチンリマブは、25年12月期で2164億円を国内外で売り上げたクリースビータの後釜との位置付け。単純計算では同社の半分近くの売り上げが消えてなくなる。