
泣いてるのに「泣いてませんよ」
世の中のルールからはみ出した存在(正しくない存在)とされている直美は、正しい人を好きになれない。
直美の親代わりの牧師・吉江善作(原田泰造)はりんの貧しい窮状を見かねて伝道者にならないかと持ちかける。そうすれば経済的に少し楽になる。伝道者は正しい考えを広げていく仕事だ。
「正しい、で生きられる幸せな人が嫌い」と吉江の持ちかけを断る直美。正しく生きられない人がいて、自分もそのひとり。でも捻(ひね)くれた自分も嫌い。
りんと直美、こうしてみると、甲乙つけがたい。慎重にどっちも好感度を下げないように描いている印象を受ける。Wヒロインだから、どちらかが下がってどちらかが上がるわけにはいかないだろう。
りんと直美、実は似ている。ふたりとも「正しさ」に苦しんでいるからだ。正しさに邁進(まいしん)しているわけではなく、正しくありたいのに間違えることに苦しむりんと、意図せずして正しさから選ばれない自分に苦しんでいる直美。
正しさって何だろう。とまああまりむずかしいことを考えず、ここでは、吉江が最も好感度が高いと思っておきたい。
吉江は善作という名前だけに善人そのものという人物。そんな彼を困らせてしまう自分も嫌いとこじらせている直美に涙ぐみながら、「泣いてませんよ」と嘯(うそぶ)く吉江。顔はあきらかに泣いている。その顔にほっこりする。原田泰造が演じているからますます善人感がアップして見える。りん派、直美派になる前に、吉江派になってしまいそうだ。
ちなみに、このレビュー連載の担当編集K氏は、「正しいことが嫌い」と聞いて原田泰造のネタ「曲がったことが大嫌い」を思い出したそうだ。確かに。
「正しいことは難しい」「正しい人が嫌い」「曲がったことが大嫌い」みんな違ってみんないい?
上坂樹里と原田泰造はNHKのドラマ『生理のおじさんとその娘』という画期的な作品で、父娘役で共演している。原田演じる父は生理用品をつくる会社に勤務していて、YouTubeなどに顔出しして生理や生理用品について語り「生理のおじさん」として人気者に。
だが上坂演じる娘の生理についてSNSで語って炎上してしまう。思春期の娘はこんな父が耐えられず……「生理」という男性と女性の決定的な違いを題材に、父と娘の対立と歩み寄りを真摯(しんし)に描いて高い評価を得たドラマだった(脚本は吉田恵里香)。
このときの人のいい父親とナーバスな娘の関係性のお芝居がとても良かった。今回も、吉江と直美のシーンは癒やしになりそうだ。







