仕事の価値は時代によってシフトする

 例えば、数年前までプログラマーは稼げる仕事として人気でした。ところが今、AIが自らコードを書ける時代になった。アメリカでは、かえって配管工のようなフィジカルな仕事のほうが人気を集めているという話もあります。

 お金のためだけに仕事を選ぶと、どうしてもモチベーションの維持が難しくなる。自発的に学ぼうという気持ちも湧いてこない。しかも、その稼げる仕事自体が、時代によって急激に価値を変えてしまうリスクがある。

 つまり、「やりたいこと」を軸にするのは、単なる理想論ではなく、変化の激しい時代を生き抜くための、極めて現実的な戦略でもあるんです。

――では、森田さんにとって気象の仕事は、最初から「100%やりたい仕事」でしたか?

 うーん、正直に言えば、限られた選択肢の中で選んだものでした。私も最初は、なんでも好きな仕事を選べる立場ではなかった。働き始めた頃に痛感したのは、自分にはコネがない、学歴もない、キャリアの「発射台」になるようなものが何もないということでした。

佐藤メモ→森田さんは祖父、父親とも板金工という職人一家で生まれた。男3人、女1人の兄妹の次男。愛知県立犬山高校を卒業後、高校の先生の勧めで日本気象協会東海本部に就職。1974年に東京本部に転勤。92年に日本初のフリーお気象キャスターとなり、民間のウェザーマップを創業した。

 だからこそ、意識したことがあるんです。それは「希少な人材になる」こと。みんなと同じ土俵で戦っても、勝てない。だったら、人があまりやっていない専門分野で勝負しよう。それが私にとっては「気象の世界」だったんです。

――ニッチだけれど、確実に需要がある場所を探されたということですか?

 ええ。自分の置かれた状況を冷静に見極めて、勝てる場所を探す。これは今のビジネスパーソンのキャリア戦略にも、そのまま通じる話だと思いますよ。「やりたいこと」と「自分が勝てる場所」の円が重なるところを見つけられれば、それが一番強い。

森田正光もりた・まさみつ/1950年名古屋市生まれ。財団法人日本気象協会を経て、1992年初のフリーお天気キャスターとなる。同年、民間の気象会社 株式会社ウェザーマップを設立。親しみやすいキャラクターと個性的な気象解説で人気を集め、テレビやラジオ出演のほか全国で講演活動も行っている。2005年より公益財団法人 日本生態系協会理事に就任し、10年からは環境省が結成した生物多様性に関する広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーとして活動。環境問題や異常気象についての分析にも定評がある。学校法人桑沢学園 東京造形大学 客員教授、一般社団法人島バナナ協会 代表、将棋ペンクラブ審査員。好きな天気は「竜巻」。