これはつまり、JAXAにはできなかったことを、植松電機がやってのけたということですよね。そこにこそ、「失敗から得られる価値」と「失敗そのものの価値」の両方が含まれていて、その積み重ねをNASAが認めたというのは、本当にすごいことだと思います。

植松:失敗って、植松電機でもJAXAでも、未知に挑むからこそ「しちゃうもの」なんです。そしてそれは、実はとても貴重なデータなんですよ。だからこそ、失敗を「下げて」はいけません。失敗が起きたら、「ラッキー!またひとつデータが取れた」と思って、しっかり記録・分析しておくべきなんです。

 でも日本では、失敗を「なかったこと」にしようとする人が本当に多い。それが、すごくもったいないと僕は思っています。例えばアメリカでは、スペースシャトルが事故を起こした時、その事故報告書が何百ページにもわたって詳細に作られ、インターネット上で誰でも読めるように公開されているんです。でも日本では、ロケットに事故が起きると結果は報告書としてまとめられますが、誰もが簡単にその内容にアクセスできない。時代にあわせて周知の仕方もアップデートしてほしいですね。

失敗してきたからこそ
トップレベルの先生に出会える

書影『大人の小学校』(扶桑社、田村 淳)『大人の小学校』(扶桑社、田村 淳)

植松:今、うちの会社には全国からいろんな企業、大学、研究機関が実験に来てくれています。うちは過去にたくさん失敗してきたおかげで、たいていの実験は遠隔操作で安全に実施できるノウハウを持っているので、うちでやると安全なんです。

 正直、お金にはならないけれど、多くの貴重な実験が集まってきて、その実験を通じて世界のトップレベルの先生たちと出会えます。装置のセットアップを一緒にやり、実験が成功すれば一緒に喜び、先生たちは僕らの名前を論文に載せてくれる。そしてその論文を読んだ別の先生がまたうちに来る。知恵と経験と人脈だけは、ものすごい勢いで入ってくるんです。

 キャッシュみたいな、目に見える“利益”ではなくても、知恵と経験と人脈が入ってくれば、それはもう絶対的な“儲け”だと思います。そんな風に思えたら、きっと「失敗」に対する不安って、もう少し減るんじゃないかなって、僕は思っていますね。