今の延長線上では
設定した目標にたどり着けない

 現状の少し上の目標設定では、「今持っているリソースをいかに効率よく使うか」という前提からスタートするため、新しい革新的なアイディアは生まれません。

 たとえば、僕が若手時代に「今年はキャリアハイの9勝だったので、来年は10勝したい」という目標を立てたところ、案の定、その年のオフシーズンは、今持っている球種を磨くことだけに意識が向くことになりました。新しい何かを取り入れるのではなく、今持っている武器で戦おうとしてしまったのです。その結果、翌年は10勝はおろか、わずか5勝に……。まさに、小さな目標を設定したことで、何一つ新しいアイディアが出てこなかった苦い記憶として僕の心に残っています。

 一方、どうやって達成するのかが想像できないほど現在地とは大きく離れたゴールを設定すると、「目標を達成するためには何を変える必要があるか?」と人は考え始めます。

「今のままでは絶対に不可能だ。では、どうすればその目標にたどり着けるのか?」

 僕自身、既存のやり方を疑い、クリエイティブに、そして必死に新しい道を探し始める感覚がありました。リーグワーストのピッチャーが、超一流のみが集まるオールスターゲームに出る。このゴールを本気で目指すなら、今までの自分を根本から変えるしかありません。目標設定をする際に大切なのは、評価や成績といった「今の自分」を一度脇に置いて、現在地とは全く関係ない、自分が心の底から「本当にどうなりたいのか」を問いかけることです。

 その目標を設定した瞬間から、僕のモノの見え方が変わりました。新しいことに取り組まなければゴールには到底たどり着けないという強烈な危機感が僕を突き動かし始めたのです。

慣れ親しんだ環境を
変える覚悟を持つ

 そこで、まずは環境づくりに取り組みました。24時間、いつでも野球と向き合える環境をつくるために、気候が暖かく、冬の間も練習ができるアリゾナに家を購入し、庭を改装してブルペンをつくり、駐車場を本格的なトレーニングジムに変えました。研究機関で動作解析を行なったうえで、フォーム改造にも着手し、球速の向上を図りました。