田んぼの前でおにぎりを持つ姉妹写真はイメージです Photo:PIXTA

コメ関税がゼロになり、アメリカ側も農産物の輸入時の関税をゼロにしたら、日本農業に何が起きるのか。日本からアメリカへ農産物を輸出する場合を想定して、考えてみると意外な結論が見えてきた。※本稿は、野口憲一『コメ関税ゼロで日本農業の夜は明ける』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

関税より高い壁となるのが
農産物輸出の「非関税障壁」

 日本の農産物の品質は高いので、「関税がゼロになれば、すぐにでも輸出が増えるはずだ」と考える方もいるかもしれません。しかし、現実はそう単純ではありません。日本の農産物、特に野菜がアメリカ市場へ輸出されにくい最大の理由は、関税ではなく「非関税障壁」にあります。

 その一つが、植物防疫や検疫に関する厳格な制度です。アメリカは、農産物に対して極めて高い安全基準を求めており、それに適合するためには細かな生産管理が必要となります。残留農薬や病害虫のリスクを最小限に抑えるための措置は当然必要ですが、それに伴って求められる膨大な書類と複雑な手続きが、小規模な農家や農業法人にとっては実質的な「輸出の壁」となってしまっているのです。

 さらに、輸出の実務面においても課題は山積しています。必要な書類作成や貿易実務の知識、検疫対応、現地の基準に即した商品仕様の調整まで、多岐にわたるハードルが存在しています。これらに対応するための人材や時間、資金がなければ、輸出に取り組むこと自体が難しいのが実情です。