サラリーマンでありながら海外の映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売から話題となっている。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛する同書から、抜粋・再構成して特別公開する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

脚本の教室Photo: Adobe Stock

「いい人」なだけでは進まない場面

「いい人」と聞いてどんな人を思い浮かべるでしょうか?

 人の話を聞ける人? 優しい人? 否定しない人?

 もちろんそれらは素晴らしい資質ですが、必ずしも「いい人」でいることが最善でない場面があります。

 それは、多くの異なる役割の人が集まって何かをつくるプロジェクト。まさに映画がそうです。

リーダー=司令塔

 映画を作るときは、さまざまなプロフェッショナルが集まり、それぞれの仕事をします。

 その中で、監督はいわばリーダー。司令塔。

「優しさ」と称して刻一刻と過ぎる現場の時間を浪費していては、せっかく集ってくれたスタッフの心も離れてしまうでしょう。

 自分の役割は何か。限られたリソースの中でやりきるためにはどうしたらいいか。その優先順位を間違ってしまう人が多いのかもしれません。

 しかし、真剣な現場では、そのような忖度は不要です。

まずは自分がやりきること

 そして大事なことを。

 私はハリウッド式の脚本術と、完全オリジナルの脚本術をミックスして映画を作っています。オリジナルな作り方は、

「あなたが本当に書くべき物語を書こう。
個人的な物語で構わない。
どうしても書かないといられない物語を書こう。
どうしても作らざるを得ない物語を作ろう。」

 という考え方に基づいています。

 なぜなら、「これを書き切ったら私は死んでも悔いがない」そう思えたなら、もうそれは完璧な脚本だからです。

 そして逆説的ではあるけれど、そんな作品でなければ、スタッフも俳優も観客もついてこない。し、そんな作品であればそれは叶う。私はそう思います。

 リーダーが本気で邁進している姿を、みんな見ているのです。