「書かない窓口」を実施している市町村の割合

自治体DXで進む「書かない窓口」記載台撤去やリモート対応も前進、国主導でデジタル基盤を整備せよ

 春は卒業や入学、就職、異動の季節だ。全国的に人の移動が活発になり、それに伴って自治体の窓口に出向き、転出・転入の手続きをする機会も増える。その窓口で「これまでより広々としている」と感じたことはないだろうか。

 実は、これまで窓口の大きなスペースを占有していた記載台が各地で撤去されつつある。人口の多い自治体ではまだ健在であるものの、最近は隅へ追いやられがちだ。

 背景にあるのが、自治体で進む「書かない窓口」などの窓口改革である。この窓口改革(自治体フロントヤード改革)は、自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画改定(2023年11月)で重点取組事項の筆頭に位置付けられた。その目玉が、申請書や届出書に記載せずに手続きができる「書かない窓口」である。現在、1741団体のうち525団体、全体の30.2%の自治体が実施している。

 仕組みとしては、マイナンバーカードを利用して氏名などが自動記載された書類を出力するものや、読み取った情報を業務システムへデータ連携するものがある。前者は紙を印刷するだけだが、手書きに難儀する高齢者にとっては助けとなるだろう。後者は仕組みとしては理想的だが、普及率は12.6%にとどまる。

 特に春は転出・転入が多いが、マイナポータルで転出届と来庁予定を送信すれば、手続きは転入先の自治体に出向くだけで済む。転入先の自治体では転出証明書情報をあらかじめデータで取得できるため、入力作業が省ける上に、来庁者を受け入れる準備も進めやすい。

 筆者は最先端とされる自治体窓口を訪れたことがあるが、「手続き」や「相談」などのゾーンに分かれ、プライバシーに配慮したブース内で座って手続きできるよう設計されていた。他の自治体でも、本庁まで出向く必要のない「リモート窓口」や、交通が不便な地域を巡回する「移動窓口」など、それぞれの地域特性に応じた改革が行われている。

 将来的にはスマートフォンでデータ入力や連携まで完結できることが望ましい。ただ、保険証表示で一部の氏名が「●」になるといった事例もあり、国民の不安は根強い。行政事務標準文字(約7万字)は通常のPCやスマホでは扱えず、自治体の努力だけでは越えられない問題でもある。こうした課題の解決に向け、国が責任を持ってデジタル基盤を整備すべきだ。

(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)