『ハーバード、スタンフォード、科学的に証明された時間をムダにしない人の習慣』(アスコム、堀田秀吾 著、税別1600円)拡大画像表示
「深酒は体に悪い」とわかっていても深酒をやめられない人は、「酒は百薬の長だから」「酒を飲まないと眠れなくて、健康に良くないから」と都合のいい情報ばかりを信じ、「深酒は体に悪い」という思考自体を変えてしまいます。
仕事でも、「この方針は正しい」と信じたあとで、現場でうまくいかない状況に直面すると、「タイミングが悪かった」「相手の理解が足りない」と考え、方針そのものを見直すチャンスを逃してしまったりするのです。
なお、スタンフォード大学のフェスティンガーらは、被験者を2つのグループに分け単調な作業をさせた後、次に実験に参加する人(実はサクラ)に対して、「この作業はとても面白くて楽しかった」と嘘をつくことを依頼しました。そして、片方には報酬として20ドルを、もう片方に1ドルを与え、作業に対する感想を聞きました。
すると、1ドルしかもらえなかったグループのほうが「作業が楽しかった」と感じていました。彼らは報酬の少なさを正当化するために、思考のほうを変えたのです。
ちなみに、20ドルのグループのほうは「お金のためにつまらない作業をやった」と考えていたそうです。
「ここまでやったのに」が
時間や労力やお金を奪う
確証バイアスと認知的不協和により間違った行動に時間やお金を割き続けていると、サンク・コスト(埋没費用)がどんどん増大します。
本来なら見切りをつけ、被害を低く抑えるべき局面で、「ここまで頑張ったのに、いまさらゼロにはできない」と考え、さらにリソースを注ぎ込み、結果的に膨大な時間と労力、ときにはお金を失ってしまうのです。
ミネソタ大学のスウェイスたちが動物で行った実験でも、「ここまで時間を使ったんだから」という気持ちがあると、非生産的な活動をダラダラ続けてしまうことがわかっています。
では、どうすればこの悪循環から抜け出せるのか。
思考の偏りから脱却し、無駄な時間を減らすには、「メタ認知」を持つことが合理的です。メタ認知とは、自分の思考や行動を一歩引いて観察する力です。
すぐにできる方法としては、「自分の意見とは逆のニュース、レビュー、意見を読む」「反対の意見には、どんな根拠があるのか、と考える」「もし友人が同じことをしていたら、と考える」の3つが挙げられます。
自分の思った通りに物事が進んでいないときは、ぜひこれらを実践してみてください。情報の解像度が上がり、冷静さを取り戻し、確証バイアスや認知的不協和にとらわれるのを避けられるはずです。
・「ここまでやったのに」にとらわれず、一歩引いて自分の思考を観察する。
・現実を客観視すれば、確証バイアスなどを防ぎ、時間を守ることができる。
・ Festinger, L. (1957) [1954]. A Theory of Cognitive Dissonance. California: Stanford University Press.
・Sweis, B. M., Abram, S. V., Schmidt, B. J., Seeland, K. D., MacDonald, A. W. 3rd, Thomas, M. J., & Redish, A. D. (2018). Sensitivity to "sunk costs" in mice, rats, and humans. Science, 361(6398), 178-181.







