例えば、三井住友海上火災保険上司事件(東京高判平成17年4月20日労判914号82頁)では、上司が「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SC(サービスセンターのこと)にとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で一般職何人を雇えると思っているのですか。もうこれ以上当SCに迷惑をかけないでください」といった内容のメールを、本人を含む十数人に送信しました。このケースでは、メールの送信がパワハラと認定されています。
(1)「バカ」、「アホ」、「死ね」、「あだ名」等の暴言
(2)犯罪者認定、レッテル貼り等の人格否定
(3)指導の際の大声
(4)大勢の前で叱る、指導メールを一斉送信で送る等の公開処刑
これらの4つのいずれかを行うと、裁判所からパワハラと認定され、損害賠償の対象となる可能性があります。さらに社員がうつ病に罹患(りかん)し最悪の場合自殺に至る等、大問題になることもあります。
裏を返せば、これらの行為を避ければ、パワハラによる紛争が起こるリスクはかなり減ります。したがって、上記の4種類の言動を行わないよう、十分に注意してください。
社長が「うちではそのようなことは起こっていない」と考えていても、実際には知らないところで部下が行っている可能性があります。そのため、パワハラの有無を確認するためにアンケート(*3)を実施したり、定期的に研修を行ったりすることが重要です。
残業代の不払いや
一方的な賃金の減額をしない
社員が残業をした場合には、適正に残業代を支払うようにしてください。
『職場の問題社員に困ったら読む本』(上野俊夫、自由国民社)
固定残業代(定額残業代、みなし残業代)を導入することも可能ですが、その場合は、雇用契約書及び就業規則に固定残業代について明記し、社員が固定残業代として残業代が支払われていることを明確に理解できるようにする必要があります。
残業代が支払われていない、または固定残業代が支払われているものの、その内容が社員にとって不明確であるといった状況では、社員の不満が蓄積し、会社に対する不信感が高まり、紛争に発展する可能性があります。
また、たとえ問題社員であっても、正当な根拠もなく賃金を一方的に減額することはできません。労使間で合意された賃金を支払うことは、会社の最も重要な義務の1つです。それにもかかわらず、賃金を一方的に引き下げることは、社員が仕事を怠けるのと同様に、会社側がすべきことを怠っているともいえます。賃金の一方的な減額は、いわば「モンスター会社」や「ブラック企業」とみなされても仕方のない行為であり、裁判所からの印象も非常に悪くなるため、決してしないでください。
(*3)…厚生労働省がアンケートの実施マニュアルを作成しており、参考になります。







