保護者へ責任を帰すことがあってはならないことも、強調しておきたい。確かに、教育期待や教育費抑制など、女子の大学進学における保護者の影響力は無視できない。また、女子が大学進学する上で母親がロールモデルになっており(*注3)、大卒の母親ほど大学教育から得られるさまざまなメリットを認識し、そのことが娘の進学希望へ影響することから(*注4)、母親の存在も重要に思える。

 しかし、母親をはじめとする保護者も、さまざまな社会的制約を経験している。母親世代であれば、「女性の大学進学」に今以上の「壁」が数多く存在しただろうし、「地方」で大卒でなくとも安定して生活している人々も数多く存在する。それゆえ、母親が経験してきた「苦労」を「娘に経験させたくない」と考えて県内進学をすすめたり、大学進学しなくとも不満なく過ごせる経験を娘へ伝えたりすることは、それほど責められることではないだろう。むしろ、娘の生活を熟慮した「最善」の選択かもしれない。だからこそ、保護者の「対峙する世界」を明らかにしていくことも重要である。

*注3 遠藤健『大学進学にともなう地域移動――マクロ・ミクロデータによる実証的検証』(東信堂、2022年)。

*注4 日下田岳史『女性の大学進学拡大と機会格差』(東信堂、2020年)。

世界に比べて大学教育費の
私費負担が高い日本

 進路選択する本人や、その家族へ自己責任を背負わせないために考えられるのは、「壁」となっている「地方」や性別の社会的諸条件をいかに取り除いていくかだろう。日本では大学教育費の私費負担割合が諸外国と比較しても非常に高く、OECDの調査によれば、2023年の日本の高等教育費における私費負担割合は63%となっている(*注5)。

 教育経済学者の矢野眞和・濱中淳子・小川和孝の著書『教育劣位社会』では、私費負担は進学者本人よりも、その保護者が担う「家族責任主義(あるいは親負担主義)」が日本では浸透しており、家庭の経済状況に子どもの大学進学が左右されてしまうことが指摘されている。親が大学教育費を支払う「スポンサー」であれば、保護者の教育方針の影響を子が受けやすく、「地方女子」はその影響がより大きくなると考えられる。

*注5 OECD “Education at a Glance 2024”(2024年)。