お金に座るビジネスマンのミニチュア
写真はイメージです Photo:PIXTA

大学無償化と聞くと、「誰もが平等に学べる社会」に近づくように思える。経済的な理由で進学を諦める人を減らし、機会を広げる政策として期待も大きい。だが、その効果は本当にすべての人に同じように及ぶのだろうか。大学進学をめぐる現実に目を向けると、見えにくい問題が浮かび上がってくる。※本稿は、教育社会学者の寺町晋哉『なぜ「地方女子」は呪縛になるのか』(集英社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

女子の大学進学は
母親がロールモデル

 大学進学には数多くの社会的諸条件が影響し、地域や性別は時に「壁」となって立ちはだかることになる。特に「地方女子」は、多くの「壁」を乗り越えなければならない。このことを看過し、「やる気さえあれば大学進学は誰でも可能」といった個人の努力や意志の問題へ矮小化してはならない。

 大学進学における個人の努力をことさらに強調してしまうと、「壁を乗り越えられないことは自己責任である」という「呪い」を子どもたちに背負わせかねず、「地方女子」を「呪縛」にしてしまう。一見すると、個人の選択に思えるものが、社会的諸条件によって方向づけられている可能性がある。だからこそ、個人の進路選択の背景に存在する家族、性別、地域社会などの社会的諸条件(*注1)を多角的にとらえ、「『人びとの対峙する世界』を知ること(*注2)」が重要であろう。

*注1 本書では高校からの大学進学に注目したが、高校入学以前に注目することも重要である。進学校へ入学できる学業成績であっても、保護者や子ども本人が大学進学よりも就職に価値を置き、就職支援の手厚い高校を選択することも十分考えられる。そして、そうした選択の背景にも、家庭や地域、ジェンダー、通学する小中学校などの影響が存在する。詳しくは、中村高康・松岡亮二(編著)『現場で使える教育社会学――教職のための「教育格差」入門』(ミネルヴァ書房、2021年)を参照してほしい。

*注2 石岡丈昇「参与観察」、岸政彦・石岡丈昇・丸山里美『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』(有斐閣ストゥディア、2016年)。