じつは、雑草のタネは簡単には芽を出しません。雑草のタネは、土の中でずっと来たるべきチャンスを待つのです。

 理科の教科書では、植物のタネが芽を出すには、水と酸素と温度が必要であると習います。しかし、雑草のタネは、水と酸素と温度がそろっても、芽を出すべきでないと判断すれば芽を出さないのです。

 野菜や草花のタネは人間がタネを播くとすぐに芽を出します。それは、人間が芽を出すのに適切な時期にタネを播いてくれるからです。

 しかし、雑草は違います。雑草にとって、いつ芽を出すかはとても大切です。もし、間違った時期に芽を出せば、寒さや日照りや、ライバルたちの存在によって、簡単に萎れてしまうからです。そのため、雑草は芽を出すべきでないと判断すれば、芽を出すことはありません。

『雑草は、なぜ何度でも生えてくるのか』書影雑草は、なぜ何度でも生えてくるのか』(稲垣栄洋、ポプラ社)

 簡単には芽を出さない雑草の戦略は「休眠」と呼ばれています。休んで眠って、タイミングを計っているのです。

 では、雑草が芽を出し始めるのはいつなのか。雑草の発芽にはさまざまな要因が関係していますが、そのうちの1つが「光が差し込む」というものです。

 芽を出しても、もし周囲が他の植物で覆われていたら、光は届かず、光合成ができません。

 しかし、何かしらの要因でまわりのライバルたちが取り除かれると、光が差し込みます。光は、ライバルたちがいなくなった合図なのです。そうすると、眠っている雑草たちは、一斉に芽を出し始めます。

 雑草は頑張っていません。自分に合わない環境で頑張るようなことはしません。

 タイミングの良いときに、タイミング良く芽を出しているだけです。だからこそ、雑草はたくましいのです。