先にお話ししたシートの作り込みもその一つですが、足回りには「PHC(プログレッシブ・ハイドローリック・クッション)」という独自のダンパーをこのクラスで初めて採用しています。ダンパーの中にもう一つダンパーが入っている構造で、かつてのハイドロニューマチックを現代の技術で再現し、底突き感のない「空飛ぶ絨毯」のような乗り心地を実現しました。同じグループのプジョーが、路面に吸い付くスポーティな「猫足」だとすれば、シトロエンのPHCは路面から離れてスーッと飛んでいくようなフィーリングです。見えない部分は合理化しつつ、乗り味やデザインといった部分で明確に味付けを変えているんです。

トランスミッションは自社製、プジョーやアルファロメオでも採用

F: 見えない基幹部分はグループの恩恵を受けつつ、人間が直接触れるシートや「空飛ぶ絨毯の足回り」でシトロエンらしさを出していると。なるほど、巨大組織の合理性と、ブランド独自の情緒の両立ですね。

 そうそう。試乗して驚いたのがトランスミッションです。ATと書いてありましたが、MT車のようなダイレクト感がある。あれはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)ですよね? なのにパドル類がない。

中:ご指摘の通り、自社製のDCTです。元々はCVTの製造で有名なオランダのパンチ・パワートレインというメーカーと合弁で開発していたユニットで、最終的にステランティスが100%子会社化しました。今はこのユニットが、プジョーの208や308、アルファロメオのジュニアなど、グループのコアユニットになっています。

 低速からのトルクが分厚く評価が高いのですが、あえてドライバーが操作できるスイッチ類は設けていません。モーターが介入し、DCTで変速制御し、高速道路ではエンジンを切ってコースティング(惰性走行)もするようになっています。その裏側では複雑な制御をやっているのですが、そこは全部クルマにお任せです。マニュアル操作するパドルも無いですし、「スポーツモード」や「エコモード」といったモードも設けていない。「日常でそこまで頻繁に使うか?」と考えたときに、あえて複雑化させず、シンプルで直感的な使いやすさを優先しています。

F:分かります。買った当初は面白がってカチカチやるけれども、1カ月もすればほとんど触らなくなる。あとは手放すまで一生触らない(笑)。

 C3は高速スタビリティも非常に高いですよね。思い切り飛ばしてもピタッとしている。とても気持ちがいい。

中:はい。あのサイズとしては信じられないくらい高いと我々も自負しております。